Inspired by NikkeiBP 20080324 特集環境経営の死角
「世界一に向けて、環境経営は大きな競争力となる」ダイキン井上会長はそう語り、中国最大手と提携し省エネ技術で戦う、国の制度に頼らない環境経営を進めている。
「まずは国の規制や基準とは別に、自立した目標を掲げる。そして技術流出を過度に恐れず、ライバル企業とでも提携して環境技術の低コスト化を進める。環境技術の幅広い普及をめざすことで、着実な利益を生み出す。そして新たな環境技術への投資を持続的に行っていく。」
松下電器も、家庭用燃料電池の開発で抜本的なコストダウンを進めるために、ライバル各社と手を組んで呉越同舟の開発体制を構築している。心臓部であるスタックは松下が担うものの、仕様を共通化できそうな周辺機器を各社が役割分担の下にコストダウンを進める。その成果を全社で共有するというもの。
「周辺機器といっても、心臓部とつながっているため、ライバル企業に技術の詳細が漏れてしまうリスクもある。それでも、燃料電池を普及させるためには大幅なコストダウンが不可欠という共通認識があった」と語っている。
ライバル企業と提携してでも、「普及を優先させる」と各社が躍起になる一方で、環境経営の危うさとして再生紙偽装事件を例に解説を試みている。
グリーン購入法とは、官公庁などに一定基準以上のエコ商品の購入を義務付ける法律。コピー用紙は、古紙配合率100%のものが調達基準となっていた。「他社が商品化しているのに、営業現場でうちはできませんとは言えない」「古紙配合率が高まると品質が落ちるが、顧客は上質な紙を求める。古紙配合率の優先順位は高くなかった」との現場感覚が存在していたことがわかっている。
グリーン購入法対象品の市場規模は全体の2~3%ト小さい。なぜ、この小さな市場のためにリスクを冒してウソをついたのか。また、グリーン購入法の基準策定時点から、100%古紙配合の再生しが作りづらいことは判明していた。それにも関らずなぜ100%古紙配合の基準がでっき、製紙業界はその基準を受け入れたのか。
グリーン購入法の基準検討時、製紙連合会は100%古紙配合の環境負荷低減への影響度が不明確などの理由から、70%の配合率を提案している。しかし、「環境省はリサイクルを進めるために100%というシンボルにこだわった」という。
製紙業界は基準策定においては抵抗を見せたものの、決まった後はその基準に“悪乗り”した。グリーン購入法の対象市場は、「お上のお墨付き」「高度な製造技術」「環境イメージ」というマーケティング要素を獲得できる。
官公庁が無理な基準を押し付け、モラルの低い企業の偽装を誘発した-
環境関連の政策や基準によって生まれた市場では、この構図に当てはまる事例は枚挙にいとまがない。環境に良いという錦の御旗がチェックの目を鈍らせていてる。
バイオエタノールの製造方法でも、「環境省が推奨するE3と、経済産業省は背後に控える石油連合のETBE。バイオマス戦略を打ち上げた農水省は当面両方を推奨する。こうした縦割り行政の場当たり的な政策が2つのバイオエタノールを誕生させ、生産現場である宮古島の混乱へとつながっている。エタノール利権、環境という名のもとに補助金と政治票が密接に絡み合っている。
国際ルールでも同様。京都議定書で認められた温暖化ガス排出量削減の仕組み、クリーン開発メカニズム(CDM:先進国が資金と技術を途上国に提供し、プロジェクトによって削減した排出枠は先進国が利用できる制度)はその承認、認定などの判断基準が不透明であるなど、リスクが指摘されている。
定見のない“お上の意向”に振り回されない独自の環境経営の推進が、求められている。
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