裏芸と表芸。芸のたしなみに、表と裏があるのをご存知だろうか。
武術は、侍にとっての表芸。趣味としてたしなんだ和歌や茶の湯は裏芸ということになる。現代では、表芸が消失し、裏芸が注目を集めている。しかし、表芸に目をやってみると、「用の美」を実現するために磨かれたすばらしい工芸の世界を築き上げていることが分かる。
たとえば、刀の製作には優れたシステムが存在し、完全な分業制の上に、全体を取りまとめる役目も明確にされていた。刀鍛冶は懇親の力で玉鋼を鍛え、研師は刀身の原型に刃を入れて美しい鏡面に研ぎあげる、鞘は鞘氏、漆は塗師(ぬし)、下げ緒は組紐師(くみひもし)、・・、完璧な分業体制により、工芸の美は実現されている。
すべてを取りまとめたのは、研氏。オーケストラでいえば指揮者にあたる。
表芸にかかわる工芸は、千年以上も続いてきた我が国の優れた芸術。作品の美も、システムの美も、しっかりと継承していきた、伝統である。
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