昨今、日本の経済格差が拡大しているという話をよく耳にする。そんな折、私の感覚ときわめて近い主張を、慶応大学樋口教授の記事に見た(NIKKEINEWS 20050913 経済教室)。
「社会にとって、どの程度の所得格差が最適であるかを見極めることは容易ではない。格差が大きすぎると公平感が失われ、社会秩序に問題が発生する反面、格差が小さすぎると悪平等を招き、人々が就業意欲を失いかねないからである。」
「政府の経済戦略会議は1999年に打ち出した「日本経済再生への戦略」のなかで、「過度に結果の平等を重視する」努力の報われない国と特徴づけ、「日本型の社会システムを変革し、個々人が創意工夫やチャレンジ精神を最大限発揮できるような「健全で創造的な競争社会」に再構築する必要があると主張した」
「その結果、所得税は70%→37%に引き下げられた。公平性重視は効率性を下げると、多くの企業が差のつく成果主義給与に切り替えた。しかし、格差が拡大すれば人々の労働インセンティブは高まるかというとそうではない。意欲の向上には、だれもがいつからでもチャレンジできる機会が均等に与えられ、公正な評価がなされなければならない。この前提が満たされず格差が拡大するだけでは、挑戦する気持ちは強まるとこどろかあきらめが先行し、社会は階層化し、閉塞感は強まるだけだ。」
「(実際のところは)日本では、非正規労働者の再挑戦の機会が乏しいことを一因に、所得層の固定化が進んでいる。公正・効率的な労働市場を生み出すには、規制改革や社会保障政策(親身になって相談にのり、情報面・経済面で能力開発を支援する仕組みなど)を通じ、再挑戦の機会を急いで拡大すべきである」
そうそう、「結果平等」と「機会平等」が区別されて議論されていないために、経済格差の議論が本質的な問題解決に近づいていないように感じる。中国のデモ、米国のカトリーナ事件を見ても、近隣との格差が心理的に与える影響は大きいなぁ、経済成長以上に社会秩序は重要ではないのかなぁと思ってしまう。社会秩序を守るための、経済成長戦略を戦略会議の皆様には議論していただきたいものである。
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