Inspired by Nikkeinews 経済教室 小城武彦(産業再生機構マネージングディレクター)
日本型経営を再評価する声が高まるなか、日本的組織の強さと弱さは同一の特徴が異なる環境下で違った形で表れたものと冷静な分析を行っている。
「伝統的な日本企業の特徴は、以下の四つ。
1. 終身雇用と年功的要素を加味した人事評価体系
2. 権限委譲による中間管理職層の裁量の大きさ
3. 株主からの弱い規律
4. 内部から昇格する経営者」
「このうち、1と2が日本的組織の強みの源泉となる。会社に対する忠誠心が高く、チームワークを尊重し、金銭よりも仕事の達成感や仲間との信頼を重視する行動様式を生み出す。これらが社員の潜在能力を引き出し、事業推進力や環境適応力となって表れる。しかし、まったく同じ特徴がある側面では大企業病として表れる。顧客・市場の論理よりも内輪の論理を優先し、変化へ抵抗する行動様式となる。」
「どこに分水嶺があるのか。筆者は会社とステークホルダーの接点がどのぐらい社員に認識されているか、つまり会社が社会に存在する意義と使命、そしてそのために各自が果たすべき役割の認識度が決定的な差を生むと考える。」
「社員の忠誠心が小世界への忠誠心と矮小(わいしょう)化しないようにするために、経営者が「青臭い」ほどの自分たちの存在意義を語り続けることがトップの重要な役割である。「青臭さ」ゆえに、トップ自身が本気度を見せないと社員は行動を起こさない、また矛盾した行動を一つとっただけで社員は偽善と見抜き行動をやめるということもある。よって、これは経営トップの専管事項である。」
「一方、もう一つの経営トップの専管事項は事業再編など痛みを伴う戦略の転換があげられる。痛みが伴う以上、チームワークを尊ぶ社員からボトムアップで立案されることは期待できない。また、痛みを受ける社員に対して、その必要性を経営理念と関連付けながら説明できる人間もトップ以外にはいない。いわば前者が平時の専管事項、後者は戦時の専管事項である。」
「日本的組織の弱点は経営者にも表れる。日本的組織の特徴は2,3,4が関連する。株主の規律が働きにくく、内部昇格者の多い日本の経営者に大使、牽制機能を設けることは重要であろう。」
米国流の成果主義をチームワークへの悪影響から懸念を示す一方、経営層への適正な牽制機能を求める姿勢に共感を覚える。
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