Inspired by Nikkeinews 20061124 「経済教室」 イノベーション 本質と課題(中)
情報ネットワークの浸透度では日米に大差はないが、生産性には大きな開きがある、とくに、マクロでの生産性とITの関係について、元橋一之東大教授は指摘する。
まず、元橋教授はイノベーションの概念を三つに分類する
- 技術的イノベーション
企業内の技術開発や産業連携から生まれる。研究開発の成果として生まれる新商品や、生産プロセスの改善は生産性の向上と直接的な関係がある。ただし、製造業が中心。日本では、民間企業の研究開発費は約十二兆円。そのうち、大企業の自動車やエレクトロニクス関連企業が四割近くを占める。 - サービスイノベーション
インターネットバンキングやサプライチェーンシステムのような非製造業でのイノベーション。米国ではとくに銀行と小売業でのイノベーションが、マイクロレベルの生産性向上を牽引している。 - 組織イノベーション
企業経営における知識マネジメントシステムの活用やビジネスエンジニアリングで多くの企業の生産性が向上している。適用先は業種横断的ですそ野の広い活動であり、マクロレベルの生産性向上に寄与すると期待されている。
元橋教授は、三つのイノベーションのうち、とくにサービス、組織イノベーションはIT活用が効果的であるとする。
日米を比較してもIT投資そのものには差がないが、米国では全要素生産性の伸び率が高まる一方、日本では低下している。これは日本企業のIT活用方法になんらかの問題があることを示唆している。たとえば、新たな企業間の情報システムを取引先企業からの要請で導入しても、十分に使いこなしていないケースが多く、生産性に対する効果は1.0%にとどまっている。
日本企業でITの有効活用が進んでいない理由として、元橋教授は以下をあげている。
一つは新たな情報システム導入時に、企業の業務プロセスや組織の改革がスムーズに行われてないこと。サプライチェーンシステムを導入する際、製造現場とサプライヤーの間に介在する購買部がいらなくなっても、現場が抵抗し、うまく組織改革が進まない企業が多いのである。また、日本企業のITシステムは部門ごとにばらばらで全社的な最適が行われにくい。ボトムアップ型意思決定メカニズムのせいで、トップダウンで改革が進まないことが影響している。
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