Inspired by Nikkeinews 20061127 経済教室 イノベーション本質と課題
引用:
知識生産の基本的な競争ルールは、最初にユニークな知識を創造したものだけが権利を獲得できるというものである。このルールをきちんと確立することが重要だ。同時に、企業や大学の連携を進めるとともに、研究の質を高め、一方で不確実性やリスクを吸収する市場を育てるべきだ。
長岡貞男一橋大学教授は、第一に重要なものとして、企業や大学がユニークな研究を早く進めることを促す制度づくりをあげる。同氏やIT分野で世界の主要企業の研究開発のスピードと特許の質の関係性をあげ、研究開発のスピードが速い企業がより質の高い特許権を確保している点を指摘する。
なお、知的財産権として権利を認める際、創造性の基準を高く設定することで、特許の質を高めることが、結果として研究開発の生産性を向上させることとなる。「新規性」「進歩性」の基準を厳格に運用するためにも、先進的な科学の知を活用したり、異分野の知識を融合する研究開発能力の育成が重要である。
第三に、創造された知識が新製品の商業化などに円滑に生かされるためには、知的財産権の譲渡やライセンス、標準関連の必須特許のプールの形成、著作権管理システムなど、知的財産権の流通・移転のしくみの整備が重要である。
第四に指摘するのは、新技術を具体化した商品やサービスをいけいれるリード役の市場を積極的に育て、イノベーションに伴う不確実性やリスクを許容し、これを効果的にプールする制度の確立である(個人的には、この点がもっとも難しく、重要であるように感じる)。イノベーションには元来、不確実性とリスクがある。医療品では、新薬を認可しなかった機会損失は、十分考慮されていない。リスク規模を抑える効果的な措置をこうじながら、こうした市場をよりイノベーティブな商品やサービスに開放していくことが、イノベーションへの誘引の強化につながる。
また、多くの不確実要因がある新技術開発プロジェクトで成功するのは少数で、大半は当面商業化できない。他方そうした不確実性は比較的費用がかからない基礎段階の研究でも大幅に低下する場合もある。失敗の可能性が高いプロジェクトを含め、基礎研究段階で多様な研究アプローチに取り組み、リスクをプールして結果的に社会全体の不確実性を減少させる。同時に研究開発プロジェクトを段階的に区切って選別していき、非効率な研究開発投資を避けるシステムを構築する。
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