Inspired by Nikkeinews 20070113 世界を語る 元フランス大統領特別顧問 ジャック・アタリ氏
アタリ氏は、「グローバル化でもっとも重要な二つの要素は、市場経済と民主主義」と主張する。両者の相互関係について、以下の指摘は興味深い。
グローバル化の変化には十分な注意が必要。市場経済と民主主義はそれぞれ普遍的な価値観、社会の仕組みだが、放っておくと市場経済が民主主義を“駆逐”して民主主義が廃れる恐れがある。市場経済は地域や分野を問わず拡散するが、民主主義は特定の国家権力の及ぶ領土に限られるからだ
今後、「官」の領域が「民」へシフトし、ワールドカップやオリンピックのように民の集合体として運営される国際組織が拡大する。そのときに、『持てる者』は民主主義のルールで決める社会保障、所得の再配分に不満を抱き、効率性を優先する市場経済に傾いて、自らの年金などを民主主義から市場経済に移し変えようとする。そうなると、効率性の追求が優先され、資源配分の公正さが後回しになりかねない。
もっとも、公正さの低下は市場経済のせいではない。民主主義が弱すぎるのだ。
これを履き違えると富の偏在は市場主義となり、社会が分裂し、反動がでかねない。これまでの歴史でも、社会が行き詰ると民主主義が全体主義に、市場経済が保護主義にのっとられるという反動を繰り返している。グローバル化の強みを引き出すには、民主主義を懸命に支えて、市場経済と競合できる対等な関係を保つことが重要。
アタリ氏は、「現実は、まだ理想に遠い」として、生まれながらにして市場経済の枠外に放置されている人への公正さの欠如を早々に解消するために、マイクロクレジットを手がけるなどしている。では、そのけん引役は誰か。
国家の枠に縛られていた二十世紀に対し、二十一世紀のキーワードとして国境を越えて動く人や組織の「ノマド」が重要となる。同じ価値観で結びつき、世界中を自在に動けるノマドこそ、グローバル化で重い役割を担う。国境や、官か民かという境界線は消滅し、地球全体の規模で豊かな『公』をめざす担い手が増えることが重要である。
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