Inspired by Nikkeinews 20070208 経済教室 最長景気の行方 (浅子一橋大学教授)
戦後最長の景気拡張。なぜ国民の多くにその実感がないのだろうか。そもそも、今回の景気回復は何によってもたらされたのだろうか。05年版の経済財政白書によれば、バブル経済崩壊により生じた過剰設備、過剰雇用、過剰債務の三つの過剰が十余年を経てほぼ解消し、企業体質の強化により世界での競争力が回復したからという。米国、中国など世界景気の堅調さ、原価価格などの急騰による国内物価の上昇など、他の要素も景気拡張に寄与している。
今後、長期の景気拡張が日常化した場合、伝統的な意味での景気対策(公共事業中進の景気対策)が不要となる可能性がある。しかし、ゼロ成長下の循環で成長率がプラスになっているだけの実感なき景気回復下では、「好調な経済、ゆえに独断の景気対策も必要ない」との三段論法で、現状肯定を常態化することは危険であると、浅子氏は指摘する。
とくに、実感を伴わない景気拡張により、拡大しつつある格差は放置できない問題である。一部大企業だけの好景気で、中小企業や消費者、地方は蚊帳の外。働く貧困層の増大、OECD諸国の中で貧困層の割合が二番目に高いといったデータもある。格差の最大の原因として指摘されているのは、企業の競争力を高める目的で、日本的雇用慣行が崩壊したため。なし崩し的に労働市場にしわ寄せが及んでいる。
景気回復により、賃上げ要求に応える向きも出てきたが、「痛みを伴う構造改革」の後にくる雇用慣行をデザインすることができているのか。厳しく経済界の動きを追っていきたい。
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