Inspired by Nikkeinews 20070217 世界を語る 元国連事務総長 ブトロス・ブトロス・ガリ氏
事務総長時代に、「平和」「開発」「民主化」を進めていたガリ氏。
「地域紛争は世界に影響を及ぼす、すべての国が議論に加わり、モノゴトの決定に関与する『国際的な民主化』の実現が重要だ。すべての国が解決に関与すれば、結果として国家よりも国際機関の力が高まる」
しかし、実現には二つのジレンマを克服する必要がある。その対策としての提言も、示唆のあるメッセージである。「正しい」ことを追求するときの、「利権問題」と「負の側面への配慮」・・・、多くの問題解決につうずるあり方の指南である。
1. 主導権を握りやすい、超大国が自国の利益と照らし合わせて考えてしまう
- しかし、長引くイランの混乱は、世界数箇所で同時に発生している地域紛争問題を米国のような超大国一国では処理できないことを証明している。環境問題も同様である
- 哲学者カントの考えにより、すべての国が民主化してからでなければ「国際的な民主化」の実現は不可能とする意見もある。しかし、中東などに民主化が根付くには時間がかかるので、強要したり、せかすべきではない。国家の体制によらず、国際的な意思決定に参加すること自体が民主化の一歩。非政府組織(NGO)や労組も加わるべきである
- 米国は単独行動主義(ユニラテラリズム)が根付いているが、大統領選等で米国民の利益にかなうと判断すれば、将来の大統領が多国間行動主義(マルチラテラリズム)に軸足を移す可能性もある
2. グローバル化は、国家や人種、宗教への意識を高める側面もある
- グローバル化はイスラム原理主義や保護主義を促す側面もある。よく鐘楼と人工衛星のたとえをつかう。グローバル化の象徴である人工衛星が周回している下で、人々はその世界に恐れをなし(耳慣れた鐘楼の音が聞こえる)集落に戻ろうとする。外向きと内向きの矛盾する現象が併存している
- グローバル化の動きと並行して、新国家主義(ネオナショナリズム)、新宗教主義(ネオリリジョニズム)、新保守主義(ネオコン)の動きが台頭し、対立する懸念もある。
- グローバル化のマイナス面を減らし、民主化を推進するために、文化や言語の多様性の大切さを訴えたい。国家が民主主義を導入するには、少なくとも五つの政党が必要と言われるが、「国際的な民主化」には五十以上の文化が必要だろう。ユネスコが採択した文化多様性条約のようなルールは有意義だ
※文化多様性条約とは
文化的表現の多様性保護と推進に関する条約。文化的活動や作品、サービスは、一般的な商業製品やサービスと同等に扱われるべきではないと規定。日本を含め30カ国以上が批准、今年三月には正式発効する。米国は世界貿易機関のルールに抜け道ができるとの懸念などから批准に反対した。
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