Inspired by 『動機づける力』ダイヤモンド社
本稿は、HBR掲載論文のなかで、よく知られた論文である。著者は、脚本家養成セミナーを主宰するRobert Mckee氏。ベストセラーとなった“Substance, Structure, Style and the Principles of Screenwriting”のなかで、「物語は、人生の構図を、単に頭脳の働きによってではなく、ひじょうに個人的な感情体験のなかで理解しようとする、人間の深い願望を満たすものだ」と説明している。
彼は、「説得には、昔からのやり方である弁論術という方法がある。しかし、このパワーポイント型のプレゼンテーションでは、理性レベルの説得しか達成されない。人は、理性だけで行動するとは限らない。」と語る。人を説得するためのもう一つの強力な方法、それが「人の心に訴える物語を語ること」である。
心に残るくらい強く感情に訴えながら、自分のアイデアを伝えたいのであれば、生々しい洞察とストーリーテリングの技術が必要である。想像力と優れた物語の原理を自由に操ることができれば、相手の感性を動かすことができるだろう。
物語とは、本質的に、人生の変化とその理由を描いたもの。物語は、人生が比較的安定した状況から始まります。主人公は、毎日毎週、同じように会社にでかけ、すべてが平穏です。それが永久に続くと考えられています。ところがそこに、人生の安定を崩すような何かが起こります。脚本ではそれを(起承転結の)起と呼びます。
物語ではその次に、安定を取り戻そうとする主人公の主観的な期待が、非協力的な客観的現実という壁にぶつかる様子を描きます。優れた語り手は、主人公がこのような抵抗を乗り越える様を描いて見せます。主人公は深く考え、数少ない好条件を活かしながら、困難な決定を下し、危険を承知で行動し、最後に真実を見出します。
古代ギリシャからシェークスピア、現代に至るまで、主観的な期待と厳しい現実の間で生ずる、この根本的な葛藤を扱っています
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