野中郁次郎教授が、ドラッカーの未来を予見する力についてこのように解説している
私たちは、バブルの行く末、イラクの現実などを予測できなかった。時代の寵児ともてはやされた経営者の本質を見誤った。しかし、ピーター・ドラッカーは、早くからナチスの本質を暴き、現在の経営で一般化されている概念(「戦略経営」「事業部制」「目標管理」など)を生み出した。情報化社会から知識社会への以降を予言したのも彼である。
ドラッカーは子供時代、父がハプスブルク帝国の政府高官であったため、シュンペーター、ハイエク、トーマス・マン、フロイトなど、知の達人と身近に接していた。また、彼は新聞記者、証券アナリスト、コンサルタントなど多彩な職業を経験し、学者としても、政治理論、米国史、経済史、哲学と経営学の範疇を超えた研究を行っている。日本美術にも講義をするなど、「高質な経験」によって形成された、豊かで広く深い「知の生態系」が彼に鋭い洞察力を与えた。
知の生態系の発展には、科学性だけではなく、人間観、世界観などの大局観が欠かせない。その下でつながりつつつかみを増していく。知は専門特化した孤立した状態ではなく、相互関係の中で創られる。
レバレッジ読書術がもてはやされる昨今。安易な知の形成術にとびつかず、将来への洞察を持って、知の生態系づくりに励みたいものである。
最近のコメント