Inspired by Nikkeinews 20071105 経済教室 エコノミクストレンド 若田部早大教授
「経済発展には、制度と歴史が重要である」。権力へのアクセスが誰にも開かれる社会の構築が必要で、成長から取り残された国に存在する各種の「わな」脱却に先進国も協力すべきと説く。
ノーベル経済学者ダグラス・C・ノース教授の『自然状態』という著書によれば、人類史から経済発展を「原始社会」「自然状態」「オープンアクセス社会」の三つに区別できるフレームワークがあるという。
- 原始社会は、顔見知りだけからなる数十人の集団
- 自然状態では、多くの権力集団が存在しながらも、権力へのアクセスは制限され、各種組織の結成も自由ではない。その結果、血なまぐさい権力闘争が勃発する恐れがあり、社会は不安定にさらされる(現在も人類の3/4が、第二段階である)
- 「オープンアクセス社会」は、権力へのアクセスが開かれ組織結成は自由である
グレゴリー・クラークの『施しよ、さらば』という著作によれば、一人当たりの所得は、1800年ごろを境に二つの時期に分かれる。第一の時期は、「マルサスのわな」と呼ばれる時代で、技術の進歩が緩慢で、一時的に成長しても人口増加によって元の水準に引き戻される。第二の時期は、産業革命後の「大分岐(グレート・ダイバージェンス」時代である。世界が二分化され、西欧の持続的成長状態と非西欧地域の停滞状態に大きく分かれた。
オープンアクセス社会への移行を進めるために、グローバル社会が心がけることはなにか。本稿では、『最底辺の十億人』という中国インドなどの新興成長地域からも取り残された十億人に目を向けよと促す。最底辺にとどまる理由は、紛争や質の悪い統治にあると指摘して、援助、貿易政策、平和維持のための軍事介入、そして何よりも法と国際的社会規範の促進を組み合わせることが肝要としている。
とくに法と社会規範、優れたコンセンサス形成が経済発展を生み出す。日本から、この技術を世界に広げることができれば、それはすばらしい国際貢献である。日本の誇るべき社会規範を見直し、世界に発信しよう。
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