Inspired by Nikkeinews 20080214 任天堂 独走は続くか
ソニーやマイクロソフト、巨大なライバルを尻目に、Wiiの登場で女性やシニア層という新たな顧客の開拓に成功。ライバル企業は自ら巨額資金を投じて、半導体、ソフトウェアの開発を行ったが、任天堂は「持たざる経営」路線を選択した。
京都市南区にある任天堂本社。一階のフロアは大小二十の応接室が配置され、国内外の部品・ソフト会社がひっきりなしに売り込みに訪れる。任天堂の社員はそこで最新部品技術などの情報を収集、次の製品にどんな機能を盛り込めるか、構想を練る。
ipod同様、ゲーム機の中身は世界の企業の“寄り合い所帯”。三軸加速センサーは米アナログ・デバイセズ、タッチパネルは日本写真印刷、生産は台湾の鴻海精密工業に委託。
Wiiの構想当時は、「両手の指先を使うゲーム機操作の否定」と映り、ソフト開発部隊の抵抗は大きかったという。なぜ自ら市場の固定化したマインドセットを超越できたのか。カリスマ前社長山内氏の後押しもあったが、「社内で聞き取りと説明を繰り返し、ハードのコンセプト浸透に成功」したという。どうやら岩田社長は、現場に入り込んで深夜まで開発者と対話を繰り返す、本田宗一郎のような人物らしい。
「捨てる発想」-。同社が尊重する考え方だ。「スーパーマリオクラブ」と呼ぶ、平均年齢30歳の男女約200人が発売前に商品を試し、バグの発見や評価を行う。使い手の視点で厳しくふるいにかける。ここで断念・延期する商品も少なくないという。
早く売り出さなければ商機を逃してしまうと多少の出来の良し悪しには目をつむり、競い合うように新業品を出してきたゲームソフト業界。任天堂はこの動きに一線を画し、新製品投入にあえて厳しい関門をもう得ることで売れるソフトづくりにつなげている。
市場経済によって、前へ、前へと前のめりになっている私たちにとって、任天堂のとるこの姿勢は意義深い。「ゲームは必需品ではなく娯楽品。いらなければ消費者は手にしない」、彼らが見つめているのは、もっとダイナミックな生態系なのかもしれない。
「明日、ライバルが市場に先手を打ってしまうかもしれない・・・」そんな予断にとらわれない生き方こそ、日本人が古来から続けている禅的生活という玄侑宗久氏。日本企業の強みは、揺らぎを受け入れる、楽しめる、資本主義との向かい方(Being)にあるのかもしれない。
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