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2007年度に広がった社内SNSの動きを、次のように振り返っています。
□■■Knowledge Power Magazine■■□ Vol.57 2008/03/28
社内SNSは「適材適所」で
■今年度の特徴的な二つの動き
今回は年度末ということで、まずは今年度のKM(Knowledge Management)
の動きを振り返るところから始めてみたいと思います。
昨今、KMという言葉はもはやキャッチーなキーワードではなく、情報活用
や知識共有の取り組みとして、当たり前に企業活動の中に組み込まれてきて
いるといっても過言ではないでしょう。それを実現させる手段の一つとして、
従来よりも高速・大容量なエンタープライズサーチが登場しています。また、
コンシューマ用のコミュニケーションツールであるSNS(Social Networking
Service)やQAコミュニティのツールなどが、エンタープライズ用に進化して
いるという動きも見て取れます。
インターネットで覚えた検索という行為を社内でも用いたいというユーザ
ニーズによって、エンタープライズサーチの普及速度は加速度を増していま
す。しかし、上記のもう一つの動きである社内SNSはいくつかの導入事例が
ありながらも、今ひとつうまくいっていないという例が散見されます。
■社内SNSの効用とは?
社内SNSは、社内の知識をマネージ(管理)するのでなく、自由な情報交換
の場を作って、緩やかなつながりの中で知識創造を図ろうという目的で導入
されるのが一般的です。例えとしてよく用いられるのが「タバコ部屋のコミュ
ニケーション」です。本来の部門・部署を離れた人同士が自らの業務と直接
関係ない話をする中から、意外なヒントが見つかる。そのタバコ部屋も禁煙
で社内から姿を消している昨今、代替としてのアンオフィシャルな会話の
「場」としても社内SNSに期待が寄せられるのです。
■目的を見失うと本末転倒
社内SNSの導入前後で必ずといっていいほど起こるのが、社員の書き込みを
匿名でさせるのか、実名でさせるのかという議論です。アンオフィシャルで
緩やかな場でのコミュニケーションであれば、ニックネームやハンドルネー
ムの方が自由に書き込みができるという意見。一方で、匿名にすると書き込
みが荒れたり、中傷や会社への批判が噴出するという懸念。その両方ともが
事実であり、十分に配慮する必要はあります。しかし、本質的には匿名・実
名のどちらの場合でも、書き込み内容をどのようにコントロールしていくか
という設計が重要なのです。
そもそも、社内SNSを導入する目的は、オフィシャル・アンオフィシャルに
関わらず、社内のコミュニケーションを活発にしたり、そこから新たな知識
やつながりを抽出しよう、ということがほとんどなのに、書き方や運用ルー
ル(いわゆる「お作法」)で固めてしまっては、柔軟な運用は難しくなりま
す。自由にするために自由を奪ってしまうという本末転倒になりかねません。
導入目的を常に念頭に置き、社内SNSという「場」の良さを活かす運用を目指
していただきたいと思います。
■「適材適所」を考えた運営を
タバコ部屋を代替する「場」としてSNSを社内に導入するという設計は、
非常に正しい選択だと考えられます。ただ、もう一つそこに、運営する「人」
が、「場」に介在しなくてはうまく回らないのです。「人」が「場」を動か
していくという「適材適所」です。パソコン通信時代のフォーラムや、イン
ターネットの掲示板、SNSのコミュニティも、荒れずにポジティブな書き込み
で盛り上がっているところは、必ずレベルの高い管理人が存在していました。
しかし、社内SNSの場合、システム部門が主体となって導入された後は、なか
なか運営にまで手が回らない。そして、ユーザ任せになって、活性化しない
か、荒れてしまうという結果になってしまうようです。
KMの成功事例には、社内の各分野のスペシャリストをナレッジリーダーと
してアサインして、ナレッジ活動を牽引させるという設計がなされたものが
あります。
同じように、社内SNSも「ただなんとなく」な書き込みをさせるだけでなく、
きちんといくつかの分野ごとにフォーラムを構築して、そこに管理人をアサ
インする必要があるのです。「社内の人と人を結びつけるツール」として、
うまく使えばSNSは大きな効果を発揮するはずです。しかし、それはあくまで
ツールでしかありません。ツールとセットで、「人」が「介在」してこそ目
的達成が可能になるのです。
KMは単なる知識活用という場面だけでなく、Webの世界と同様に、ユーザの
互恵の場面に入り、KM2.0なる考え方も提唱されてきています。社内に埋もれ
た優れたアイディアの抽出やイノベーションを創出するためにも、社内SNSの
成功事例がこれからどんどん登場して欲しいと願っています。
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