Inspired by Nikkeinews 20090502 世界を語る
ポスト金融危機の新たなモデルについて、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏は、「自分自身のための利益を求めない“無私”に基づく新しいモデルが資本主義を完成させる鍵」と言います。
金融危機だけでなく、食糧危機、エネルギー、環境、・・・深刻化する様々な問題は、個別の危機ではなく、経済の構造的な問題が様々な形で表れている証し。今こそ、株価至上主義や効率至上主義から意識を変える必要がある。
人間は、本来利己的な部分と“無私”の部分を併せ持つ多面的な生き物。これまでは、“無私”が経済に組み込まれることはなかった。私の提案は、この“無私”に基づくビジネスを創造し、資本主義に取り入れることでゆがみを正そうというもの。そういたビジネスをソーシャル・ビジネスと定義している。
自分の利益を守ろうと思った瞬間に判断力は曇る。だからソーシャルビジネスに金銭的な見返りがあってはならない。資本主義の利益追求型ビジネスで儲けることは「手段」。そこで得たお金で世界を変えることが「目的」だ。誰かが抱える問題を解決すればきっと誰かの記憶に残る。それこそが、人間の生きる意味ではないか。
独フォルクスワーゲンには、「バングラディシュの村人のための車を製造すること」を提言した。雨季の泥道を走れ、乾季にはエンジンをはずして灌漑用に使え、モンスーンの季節には水浸しとなった地域を走るために、ボートにそのエンジンを搭載でき、発電用にも使える。もちろん価格は農民に手が届くものでなくては意味がない」・・、このような議論を重ね、彼らは動き出している。
今後は、専門のMBA(ソーシャルビジネスを効率的に運営していく方法を研究する学問領域)が必要だろう。米UCチャンネル・アイランド校、仏HEC経営大学院、日立教大などに動きが広がっている。
ソーシャルビジネスの担い手が上場する株式市場も設立したい。上場には厳格に審査し、適合する企業だけが上場できる。認証を与えることにもなるので、知名度向上にも役立つ。
まずは、始めることだ。小さな一歩でもいい。たとえば、若い人たちが集まって、「この国の飲み水の問題を解決しよう」などと考える。始めたらあまりにエキサイティングなので、周囲の人も参加したいと思うに違いない。こうやってソーシャルビジネスは広がっていく。
※ソーシャル・ビジネス
貧困や環境、少子高齢化などの社会問題に取り組むビジネスのこと。主体は株式会社やNPOなど様々。営利目的でも無償のボランティアでもなく、ビジネスの手法を活用して持続的な取り組み(going concern)をめざす。これまでは、公的セクターがおもに対応してきが、民間の高い専門性を駆使した効果的な問題解決の方策として注目が集まっている。グラミングループとの連携で、ソーシャルビジネスは広がりを見せている。
- ドイツ 化学会社 BASFと保健衛生の改善に取り組む合弁会社設立に合意
- フランス ダノンとの合弁で貧困層向け低価格ヨーグルトを生産・販売
ヴェオリア・ウォーター社と安全な水づくり- バングラディシュ グラミン銀行(マイクロファイナンス)、電話(グラミンフォン)、インターネット(グラミンコミュニケーションズ)
- アメリカ ニューヨークで低所得者向けのマイクロファイナンスを開始
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