Inspired by 『ひとりでは生きられないのも芸のうち』
アメリカのペンシルバニア州のロゼトは、イタリア移民が建設した町で、1950年代心臓病による死亡率が周囲の半分ほどだった。食生活、喫煙率も同じなのに、なぜ有意に低いのか。調査チームはその理由を、「住民の連帯感が強い」「お互いの尊敬と助け合いが健康を育む」ことにあるとした。ところが、60年代に入り、キャデラックを乗り回し、ラスベガスに旅行する人が出始めたあたりから、死亡率は上がり始め、70年代には優位性が失われた。
「他人との比較や、富を求めて過重労働になるストレスと、社会の結束が崩れることが健康を損なう原因」とされ、関連研究では米国の高収入層は英国の低収入層よりもガン発生率が高い(社会競争の激しさがその一因)ことが指摘されている。
ロゼトの事例から、ジャンクフード、たばこ、酒を飲んでも、周囲からの支援と尊敬のうちにいれば、人間はあまり病気にならないことが分かる。逆にえば、「周囲からの支援と尊敬が欠如した状態」におかれると、どれほど生理学的・生化学的に健康な生き方をしても、あまり人間の生命力を高める役には立たないということ。健康法の効果はそれがどれほど社会的合意を獲得しているかによって左右される。偽薬(プラシーボ)にも薬効があるのも、どんな療法も(虫歯が痛む時にはキツツキの嘴を触る・・というおうなものでも)社会的合意がある限り、顕著な効果をもたらす(『野生の思考』レヴィー・ストロース)。人間は社会的承認を受けて初めて人間になる。だから隣人には笑顔を向けよう。自分自身が生きていくために。
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