ドイツの哲学者ハーバーマスは、18~19世紀の欧州で知識階級が集まるサロンが世論を形成する公共圏となり、民主主義の土台を作ったと論じている。
京大大学院の吉田准教授は、「SNS、ツイッターなどのネット上の対話の場が登場したことで、公共圏が復活しつつある」と見ている。オバマ大統領は大統領選にSNSを駆使し勝利を獲得した、イランの混乱をCNNが取り上げたのは抗議メッセージを世界に伝えたツィッター上で「なんでこのデモを報道しないのか?」という声が広がったからだった。このような動きから、「多様なネットワークによる情報交換が世論を形成し始めている」と考えてもいいだろう。
対話参画者の広がりという点で、大きな影響を与えたSNSだが、対話の質という点ではどうだろうか?質を考える上でヒントとなるのが、スウェーデンの政治学者、ヨアキム・オーストロームの、「民主主義の三段階」だろう。
- 透明性確保
- QUICK/単純な判断を求める(白か黒か、右か左か、など)
- 素心深考のダイアログ
現在のような一人ひとりが自分を開示し、語りかける姿勢は、透明性確保につながっている。マニュフェストなどは、さらに上の「単純だが判断を求める材料を示す」点で重要な役割を果たしている。それでは、素心深考のダイアログという点ではどうだろうか。現時点では、いまだこのレイヤーに到達できていないが、多いに可能性がある。
対話への参加者の窓口を拡大した、ネットという新たな公共圏。この公共圏を本物にするために、素心深考のダイアログのあり方が問われている。
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