Inspired by Nikkeinews 20090520 経済教室 野中郁次郎教授
株主のための四半期ごとの業績発表による
短期利益重視の姿勢、全自動車労組との関係改善を図った賃金・手当ての増額や退職者年金などのレガシーコストといった財務圧迫要因・・・、GM不振には上記のような構造的問題もあるが、野中教授は二つの大きな要を指摘する。
ひとつは、企業としての社会的存在意義(共通善)の視点を喪失した近眼的経営。もうひとつは、それに伴う価値創造力の低下による顧客支持を喪失したこと。
業績低下に伴い、GMは人員やコスト削減を最優先し、財務指標を短期的に改善させたが、顧客のため、地域社会のためといった大きな関係性の洞察を失っていった。
野中教授は、日々の実践知(=フロネシス)の貫徹が重要と説く。「いま・ここ」という特定の場の現実を変わり続けるダイナミックな文脈で捉え、「よりよい」を求め、そのときその場で最善の判断と行動をタイムリーに選択する動態知である。
本田宗一郎は、ものづくりの基本には思想や哲学がなければならないと説いた。レースコースの横に四つんばいにはいつくばり、カーブで車体が大きく傾いた二輪のライダーの目線にあわせ、全身でライダーを凝視する。振動を手で感じとろうと、地べたに手をついている・・、現場に棲み込み、乗り手の視点でよりよいプロトタイプを洞察する。対象に深く関与し、事故を超越して得られる木月は、徹底した言語化により本質を究めた言葉として表出化される。
また、開発現場でエンジニアと目線をあわせ、床の上に設計のポンチ絵を描きつつたい輪している場面もある。エンジニアの暗黙知と形式知の必死の相互交換、真剣勝負が見て取れる。
GMはトヨタ式も学んだが、実践知を組織的に伝播できなかったのだろう。「動きの中で判断する」トヨタ方式は、人間の知識創造・活用納涼kをじいかした柔軟で創造的なラインを練磨してきた。「なぜを五回繰り返す」という仕事の型は、「なぜそこに在庫があるのか」に張りマリ、複数の原因から真因(本質)を探り、究極は後工程のための生産システムという生産戦略にまで行き着く。
「動きながら、考え抜く」
実践知の本質は、日常的な積み重ねから場を重層化して全体を大きく変化させ、飛躍を導く方法に他ならない。傍観者ではなくこうした全身で直感する「現場性(アクチュアリティ)」の発想が求められる。
共通善に向かって、世界後を総合し、理想の経営を現実の中で追求することで卓越性を生み出す経営が求められている。
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