http://www.keiomcc.net:80/terakoya/2009/10/sekigaku80.html
京都に本社を置く堀場製作所は、自動車業界、半導体業界など5つの業界向けに、計測システム機器等を製造しており、従業員約5千人の半数以上が外国人というグローバル企業です。ビジネスパーソンの間では、社是の「おもしろおかしく」がよく知られています。
堀場氏によれば、この「おもしろおかしく」という社是については、「吉本興業でもあるまいし・・・」という批判を受けたこともあったそうです。しかし個別のニーズに対応した、カスタマイズ製品を提供する‘開発型企業’である堀場製作所では、なにより社員の「オリジナリティ」(独創性)が求められます。このオリジナリティは、私たちが趣味に没頭しているときのように、おもしろおかしく取り組む中で発揮されます。ですからこの社是には、こうした「趣味の感性」を仕事に活かしてほしいという思いが、込められているのだそうです。
さて、堀場氏の考える企業の必須は以下の3点です。
・ビジネスモデル
・マネジメントモデル
・教育モデル「ビジネスモデル」は、どの業界にどんな商品をどのように販売するかという広い意味の「商品政策」のことです。堀場製作所の場合、前述したように、企業毎のニーズに対応した商品を開発しており、大量生産品を製造する企業とは一線を画しています。堀場氏によれば、同社のものづくりは、お客様のことを考えてその時々に入手した新鮮な素材で、どんな料理を作るか考える割烹店のようなものだそうです。
「マネジメントモデル」については、協力会社との連携を大事にしている点が興味深いものでした。同社では、生産の8割方は600-800社の協力会社に委託しています。その中のセレクションされた80社はいわゆる「下請け」ではなく、ともに優れた製品の開発に従事する大切なパートナーです。経営環境が厳しくなって、他社が協力企業との関係を見直した時代にも、同社は逆に関係を強化したそうです。こうして築いてきた相互の信頼をベースに、現在の停滞期も乗り切ろうとしています。
「教育モデル」については、社員のことを「人材」ではなく、「人財」と呼び、その育成に最も力を入れています。また、「おもしろおかしく」という社是の通り、おもしろおかしく、エキサイティングに仕事に取り組めるような仕組みを作り上げているそうです。例として、堀場氏は自社の「FUNHOUSE」という研修所の話をしてくれました。ご自身が、以前、研修所での研修を終えると「シャバに出てきた」という感覚を持ったそうです。そこで、こんな楽しくない研修所ではダメだと、社員が行きたくなるようなペンション風の研修所を18年前に作りました。暖炉がありバーもある、そんな粋な研修所を作ったおかげで多くの社員が自主的に研修所を利用するようになったそうです。最近増築した研修所は高級リゾートホテル風。こちらもまた社員の人気を集めているとのことです。
堀場氏は、「コミュニケーション」をとても大事にしています。飛行機の操縦も、米国では操作技術だけでなく、管制官との英語のやりとりが理解できなければ安全に飛行することができません。おしゃれな研修所も社員間のコミュニケーションが活発に行われることを意図したものだそうです。
コミュニケーションも、eメールや携帯電話は便利ですが、「生の語りかけ」がとりわけ重要だと堀場氏は考えています。海外においても通訳を介したマネジメントは難しく、ヘタな英語でもいいから直接話しかけ、心を通じさせるのが大事だということです。今日の講演でも、あえて講演資料をスライドで投影せず、形式的なプレゼンテーションではなく、私たち受講生に語りかけるよう心がけられているようでした。堀場氏の経営者としての大きな魅力がじんわり伝わってくるような講演でした。
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