2010年3月19日 日経経済教室 岩井克人東大教授
雇用政策は、悲惨な生活状態、劣悪な労働環境にある非正規労働者を守れという立場と、グローバル競争下で柔軟な労働力が必要となる主張がぶつかり合い、神学論争になっている。今必要なのは、規制強化と緩和の対抗論争を超える論点の提示である。具体的には、雇用政策を格差是正や労働者保護の視点だけでなく技能蓄積と生産性向上に結びつける必要がある。
岩井氏は、雇用契約の特性を説明しています。「雇用されるとは一定の時間特定の場所にいて、そのつど雇い主の指揮命令を受けることである。法学では白地契約、経済学では不完備契約であり、どういう仕事をするかを事前に契約書に書き込むことは不可能なのである」。それゆえ、雇用のあり方は、当事者意識や職場慣習、企業の技術や労働者の教育、家族形態などがさまざまに影響する。どの国にも通用する普遍的な雇用制度があり、一足飛びに移行するという考え方は危険であるといいます。
事実、労働者が技能を蓄積する仕方は、国によって異なる。
- アメリカ: 学歴や資格で代表される汎用的能力を重視
- 欧州: 産業ごとの職業訓練を通じて技能形成を行う
- 日本: 企業内職業訓練。長期のコミットをした正社員が、柔軟な配置転換を受け入れ、会社に固有な熟練や知識を身につけてきた
この事実と神話的な技能蓄積と生産性向上のインセンティブ設計が必要だ。たとえば、日雇い的派遣労働は、景気や派遣先業無の変動リスクを個人が負うことになる上、企業には社員に技能訓練を行うインセンティブがない、これらの日雇い型人材派遣を規制し、流動的であるが技能蓄積の進むモデルが求められる。
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