Inspired by Nikkeinews 2010.10.18 経済教室
サーチ理論とは、従来の取引論(ワルラスの一般均衡論的な取引)と何が異なるのか。分権的取引は、ワルラスが想定したように取引関係者が一堂に会して交渉やオークション取引するのではなく、個々の取引関係者がそれぞれに回を重ねて会い、交渉することである。
ダイヤモンド氏が示したこの理論を労働市場に応用し、成果をあげた。
成果とは、失業と欠員が同時に存在することはどうしてもさけられないという事実を発見したことである(雇用にミスマッチ:求職者と求人企業がお互いにサーチ活動を行い、うまくマッチすればよいが、手間とコストがかかるので(能力開発や別拠点への移動など)うまくマッチせず、労働市場の調整機能に摩擦が生じるため。摩擦的失業、ミスマッチ失業、構造的失業と呼ばれる)。
また、これを前提に、多くの有用な命題を提出したサーチ理論。とくに、景気後退などのショックによって企業の売上が減少したとしても、来機構の生産性や売上高の回復が予想できれば、今期は労働者を解雇せずに雇用継続する(レーバーホーディング労働保蔵;日本企業の終身雇用、雇用調整は時間外勤務で行うモデル)考え方を説明したのは大きな成果である。
また、失業保険を充実させると、失業期間、の長期化、失業者の増加を生み、失業率が高くなる可能性があることを示したことである。
イギリス、オランダ、北欧諸国は、この理論を政策に応用、求職者や求人企業は相手がどこにいるか分からない、または技能が不足しているから仕事にありつけないという点を命題とし、就職情報の共有や技能向上政策を進めた。技能訓練、職業紹介、雇用創出策、ワークシェアリングなどの推進により、雇用機会を増加させ、失業率を下げることに成功した。
このサーチ理論は、日本で、そして企業内労働市場でも応用可能な考え方ではないだろうか。企業内にいても、成熟事業と新規事業を同時に抱えるケースは少なくない。このミスマッチをどう解消するのかは、多くの企業の課題である。
具体の政策実践でも検証されはじめているミスマッチ解消政策。この仮説検証を企業内でも応用して、展開してみたい。
最近のコメント