『パタンランゲージによる住宅の建設』by C.アレクザンダー
ポストモダン社会での住宅の生産が、機械的でテクノロジー一辺倒であるとの問題意識から、より社会的な生産プロセス・体制に挑戦しようというアレクザンダーの意志で生まれたアプローチである。
「情感のあるシステムづくりには、ユーザ参加型の実験的アプローチが望ましい」というメッセージは住宅建設以外の領域にも適応可能なコンセプトだろう。
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生産プロセスの基本条件
1. 建築家と施工は分離されていてはならない (アーキテクトビルダー)
2. 生産システムは地域で高度に分散化された職人群を利用すべきである(ビルダーズヤード)
3. 共有地はユーザーにとってもっとも大切な場所であり、彼らの管理下にあるべきである(共有地の共同設計)
4. ユーザーは、自分自身の住まいの間取りにについて、現代建築のような受身の姿勢ではなく、各家族によってそれぞれ異なる間取りができるような積極的な姿勢で参加しなければならない(個々の住宅のレイアウト)
5. 施工のシステムや技術やディテールは、プロセスそのものが必要とする、連続的な巧妙かつ微妙な修正の利くものを選ばなくてはならない(一歩一歩の建設)
6. コストコントロールは、柔軟な設計施工のプロセスに適応しなければんらない(コストコントロール)
7. 建物の細工は、手作りの楽しいものでなくてはならない(プロセスの人間的リズム)
「私たちが取り扱うのは、おもに根源にある情感についてである。人が自らの価値観と自分自身とを統合していく、人間的で根源的なものとして再構築されるプロセスである。そうして人々は社会的な絆を形成し、大地とのつながりを持つようになる。こうしてつくられた住宅には、何にもまして人間的な価値がある。」
「今日世界中にある住宅生産のシステムを考察すると、そのほとんどに、人間社会に必要な二つの基本的な認識が欠落している。一つは、すべての家族、すべての人間は唯一無二であるという認識であり、人間の尊厳を表し守っていくにはこの独自性が表現されなくてはならないということである。もう一つは、すべての家族、すべての人々は社会の一部分であり、ほかの人々と協力するという結びつき、つまり社会の中でのほかの人との信頼関係を保てる場所が必要だという認識である」
「アーキテクトビルダー。現代の建築家の職能と、請負業者の職能の両面を兼ね備えた人間が必要。建築の細かな責任を持つとともに、家族が実際の設計に密接に関わることを可能にする。施工のシステムは彼によってコントロールされ、絶えず変更、改良されていく。彼は伝統的なマスタービルダー(棟梁)の現代版と言える」
「ようするに、住宅とは工業的に生産されるものではなく、愛情をかけて育むものであり、つくられていくうちに成長し、独自性を持ち合わせていくものである」
「デザインの決定は一つ一つ、建物ごとになされるべきであり、工事の進行中でも決定できるようにすべきである」
「ビルダーズヤードとは、ビルダーとコミュニティが独自により個人的な関係を結ぶための中心である。役割は、
1. アーキテクトビルダーたちに拠点を与える
2. 建設システムを具体的に見せる場所。建物がそのままm建設システムを具体化した実例となり、色々なディテールが様々な使われ方の中で、どのように見え、どのように機能するのかといったことを見せてくれる。実験をする場所でもある。
3. 建設プロセスを進める上での拠点となる。プロセスに必要な道具がそろっていて、窓用の切断ジグや梁のスペーサー用ジグなどの専門工具も用意されている。部品本体を制作する場所にもなる。
4. 家族が住宅をデザインするときに使うパタンランゲージを建物内に具体的な形で表現する。ここではパタンランゲージを読み取り、学習し、検討できるような小さな部屋が必要。
5. 各クラスターごとに実際の建設プロセスの進行記録、請求書、使った材料の量、コストコントロール、個々の家族の実働時間などの記録をすべて保留する。
6. 建設期間中は、アーキテクトビルダーと家族が一緒に集う場所となる。
7. 周辺のより大きなコミュニティの核としても機能する。コミュニティ全体の人々がしだいに建設プロセスに親しみ、彼ら自身の問題として受け止めるようになる。
8. 建設プロジェクト終了後も、コミュニティセンターとして遊び場、教会、ダンスホール、カフェなどとしてその場にふさわしい機能を持ち続ける」
「ビルダーズヤードとは実験的な製作を扱う一種のワークショップ(工房・作業場)である」
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※参考_引用 Wikipeia
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人々が「心地よい」と感じる空間を分析して、253のパターン(形を作るルール)にまとめ、『パタン・ランゲージ』という著作にした。パターンの例を挙げると、「小さな人だまり」「座れる階段」「街路を見下ろすバルコニー」などがあり、これらは家を建てたり、まちづくりのルールを決める際に役立つヒントとなっている。アレグザンダーによればこれらのパターンは各国の美しい街や住まいに共通する普遍的なもので、かつては誰でも知っていたものであるが、急激な近代化の中で忘れられてしまったものである。
まっさらな土地に直線の広い街路を造り、高層ビルを建てる、といったかつての都市計画の理念とは正反対であり、既にあるまちの文脈を読み、狭い路地や目にとまる植栽、窓からの眺めといったヒューマンスケールな要素が重視されている。
こうしたパターンを見出すのは住まい手や住民自身であり、建築家はその過程を手助けして、実際の形になるよう設計・施工の監理を行うことが役割になる。
日本にもパタン・ランゲージの発想が紹介され、埼玉県川越市で67のパターンからなる「川越一番街 町づくり規範」(PDF[1])が作られるなど、まちづくりのルールに取り入れられている。 アレグザンダー自身による実践の例として、日本の盈進学園東野高校(1985年)があり、学校関係者がパターンを見つけ、キャンパス計画を作っていった。
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