Inspired by Nikkeinews 20070328 夕刊文化 経済学者宇沢弘文氏
昨今の企業や行政の不正行為、モラルの崩壊が起き、日本社会にゆがみが生じている。これを正すには?宇沢氏は、従来の日本にあった「みなが守るべき共有財産(コモンズ)」の考えが失われたことに問題の根があると看破する。
日本には従来、所有権ははっきりしないが、皆の共通財産として何百年も管理されてきた存在(コモンズ)を維持してきた。水俣も、水銀で汚染される前は魚が湧き出すといわれるほどのすばらしい漁場だった。それは、室町時代以来、漁民が自らに厳しいルールを課し、違反したものには制裁を加えてまさに命がけで守ってきたから維持できていたもの、共通の財産である。入会地もかつては材木や焚き木などえを得て生活を維持するのに役立てていた。しかし、明治時代の地租改正によって、私有か公有か明確に分類され、所有関係が明らかでないものはほとんど姿を消してしまった。
世界的にも、コモンズの問題は存在する。中近東では、地下水の管理がコモンズの一つとして知られている。インドや中国にも「総有」というふるい制度がある、相談して物事を決めるという意味も持ち、公共哲学の「対話的合理性」にも通じる精神である。
現在では、入会地の裁判問題に詳しい米国デューク大学のマーガレット・マーキン教授が国際コモンズ学会を創設するなど、世界的な潮流になりつつある。
社会的共通資本の重要性は、皆が仕えるということにより、自分たちの共通の財産として大事にしようという心をはぐくむこと・・・。医療と教育がこの資本の中でも重要な柱と語る同氏の取り組みに、尽力したい。
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