Inspired by Nikkeinews 20070816 経済教室 「甦る経済思想~ケインズ編~」
「大きな政府論」と混同されがちなケインズ主義だが、彼の関心の焦点は、「資本主義を適切に管理(manage)する」ことにあったとする。
第一次世界大戦前夜、グローバリゼーションが進み、各国が貿易で結ばれることで戦争の可能性は低下しているとする「資本主義の平和」は、多くの支持を集めた。最近でも、『フラット化する世界』でトーマス・フリードマンが、国境を越えた企業の投資活動が古典的な地政学の対立を抑止する効果がある(=デルの紛争回避理論)と主張し、話題を集めた。
しかし、歴史を見ると、貿易で結びついていたはずの二国が戦争を始めた例はいくつもあるという。第一次世界大戦でも、英国は最大の貿易相手国であったドイツとの戦争を回避できなかった。
その原因としてケインズがあげるのは、世界経済が抱えていた三つの不安要素である。
- 「人口過剰」 急激な事項増加が、政情不安を呼んだ
- 「富の不平等」 成長による資本蓄積はあったものの、労働者の分配が低く抑えられ、国内消費が伸びなかった
- 「食糧問題」 欧州は米国から食糧を輸入していたが、米国も人口が増えて、輸出余力が低下、実質価格が上昇し、家計を圧迫した
ケインズは、戦争の経済的原因を、「人口の圧迫」「市場獲得競争」で起こるとの見方を示し、自由放任の経済体制下では、需要の不足という国内の経済的困難を解決するのに、国外の市場を強引に求めるしかなかったと説明する。だが、国家による人口や需要の管理により、それらの要因を除去できる可能性がある。
本稿を担当している柴山滋賀大学准教授は、昨今の中進国や途上国の人口爆発の現象にふれ、これらの国々で政府組織が未発達である点を指摘。ケインズの主張が、今のグローバリゼーションの動きを考える上でも示唆的であるとする。
「経済の社会化が、共同社会の安定につながる」という主張を、国家の成熟を待って行うのか、意思のある地域住民へのEmpowermentによって行うのか、ケインズの意思を汲み取りつつ、新たなモデルの探索につなげたい。
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