Inspired by Nikkeinews 20060823 経済教室 日本を磨く
スタンフォード大今井賢一シニアフェローは、シュンペーターの「新結合」の時代が到来したとし、なかでも、「現在をみつめ問題の焦点を見出すためには、シュンペーターのいう『転換』のプロセスのなかで、『われわれはいまどこにいるのか』を見定めておかなければならない」と、マクロ的なコンセプトを発見することの必要性を説く。
「一般目的技術(GPT:General Purpose Technology)」。この概念は、「単一技術であって、初期にはかなり改良の余地があるものの、最終的には幅広く利用され、多く用途を持ち、かつ多くの波及効果をもつもの」をあらわす。印刷技術、電力、蒸気機関、コンピュータなどの技術革新である。従来のGTPの大半は、技術自体というより、その利用方法を創造し、多面的な用途を見出した、「ユースラディカル」な革新であった(最近の例では、i-mode)。
一方、「我々はどこにいるのか」という問いを考えるのに、かつて梅棹忠夫氏が産業を人体で例えたものが参考になる。技術革新の大きな潮流を、筋肉系(蒸気機関、発電機、鉄鋼など)、神経系(通信、鉄道、電力送配電など)、頭脳系(情報・ナノ・バイオなど)と捕らえた。
この流れを受け、今井氏は、「今後はユースラディカルで、かつ頭脳系のイノベーションが求められている」と言及している。その実現に、シュンペータは次の経済学的ポイントを踏まえると、①変化は、経済体系の内部から生じ、体系の均衡点を動かすものである、②新しい均衡点は古い均衡点からの微分的な(段階的な)歩みによっては到達し得ない-ということになる。
ここで、同氏は過去の経路に強く制約され、同じ土俵で競争すれば、すぐれた部品や材料技術がいかに多くとも、その競争プロセスは、必然的に最終製品へのデバイスやデジタル素材の過剰なつめこみ競争となり、ユーザーの求める機能を超えたオーバーシュート(過剰)を招くと指摘。これが、クリステンセンが「顧客の意見を受け入れることは問題を悪化させる罠に陥ってしまう」と指摘するゆえんであり、「機能の詰め込みを的とみなす」というデザイン哲学とそのための経路創造に取り組むIDEOが注目されるゆえんである。
「世界には、人々の欲するものが適切な仕組みで供給されていない未開の市場が無数にある」と、プラハラード氏(ミシガン大)の「ネクスト・マーケット」(貧困層を顧客に変える)ために、使命感を持って立ち上がれ!という同氏のメッセージに、応えていこう!
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