医療保険の破たんは、病気の未然防止の動きを活性化させている。四月から始まるメタボ健診、2013年以降に予定されている指導実績を伴わない保険者への負担金増額制度など、健康管理は自己管理の域を超えていくようだ。
健康増進法という法律の制定により、健康でありつづけるための市場が拡大する一方、「メタボや喫煙は悪である」「これらに該当する人は自己管理のできないひとである」という、ファシズム(暴力的独裁)色のマインド醸成に一役を買っていないだろうか。
「肥満と負債の関係」から個人行動を研究する池田大阪大学教授によれば、「せっかちで、将来の損失よりも現在の利益にウエートを置く人ほど、負債も肥満も多い」という。そのように聞けば、環境問題と近似の構造であることに気付く。「将来と現在の利益、どちらにどのようにウエートを置くのか」という点で、個人行動の総体が地球行動全体へもたらす影響としてとらえ直す必要があるということだ。
なにか、「暴力的独裁」色を感じるのはなぜだろうか。それは、医療保険制度の再構築という社会構造の問題に目をむけ、個人が個人の理由で肥満を解消するという必然性を考えさせていない点にある。「みなさまが迷惑を被ることが分からないのか」とでも言わんばかりに、肥満や喫煙の人を責める姿勢、どうもこれが許せないのである。
SRC(社会的責任消費)では、個々人が消費の選択権を握っているために、「あまり高くては変えない」という現在の状況と、「それでも地球のために一歩踏み出すことができれば」という将来の状況という矛盾を個々人が克服するという、創造的な取り組みを生んでいる。
医療保険の破たんも、負債や喫煙に向かう「高ストレス社会を生き抜くために」という現在の状況と、「老後を笑顔で元気に」という将来の状況という矛盾を個々人が克服する動きへと転換する必要がある。官僚のみなさまには、人間への共感にねざした制度構築を切に願う。
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