Inspired by Nikkeinews やさしい経済学 國領二郎教授 IT時代の組織と情報戦略
IT産業の理解には、ソフトの二つの特徴の影響を読み解く必要がある。一つは、情報を複製することが簡単で、追加生産に必要な限界費用が極めて低いこと。もうひとつは、いまだに人手に頼ることの多いソフトの生産性の低さ(=ソフトがボトルネック)。
ハードの生産性がボトルネックであったころ、ハード専用のソフトを企業が独自に作っていた。しかし、ハードの性能向上により、システムコストに占めるソフトの比率が急激に高まった。その結果、ソフトを多くのハードで「使いまわす」必要が出てきた。使いまわしのインセンティブが働き、今日のIT業界では、業界の枠を超えたモジュール化された商品を売る、オープン化の動きが加速化された(携帯なども垂直統合で挑戦していた日本は、この波に乗り遅れた)。
アップストアは、アップル社が提供するソフトウェア販売サイトで、個人でも自分たちの制作物をアップロードし、販売できる。このような多様な主体が提供する商品や情報を結合して、大きな価値を生み出す基盤を、「プラットフォーム」と呼ぶ。
世界中に普及したプロセッサーのハードウェアも、クレジットカードなど事業者と個人を結び付けるものも、株式市場のようなオープンに出資者を募るものも、プラットフォームと言える。政府が用意するインフラや制度と異なる点は何か、それは、契約や技術を活用して、さまざまな仕組みを民間が創意工夫を加えることができる点で、進化し続ける基盤と言える。
国領氏は、「多くの主体を結び付けるうえで、大きな要因となっているのは、巧みな制約(=ルールの設計)である」という。
自由度が高いほど、多くの主体者が加わるわけでもない。クレジットカードなども、メンバーの審査や、支払などの明確なルールがあり、それが守られているという信頼が、利用者も安心して使えるし、お店も見知らぬ顧客に信用売りができる。日本古来の茶の湯の作法が、一見堅苦しい制約を設けながら、それが却って身分を超えた自由なコミュニケーションを成立させることを想起させる。
自由度の高いインターネット(=Openness)×適度な制約を提供してくれるプラットフォーム(=Policy)
「よりよいプラットフォームの構築」にこそ、Open Network社会の影を抑え、安心して利便性を享受できる鍵がある。
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