自動車と電機業界の不振が、日本経済全体への低迷に大きな影響を及ぼしている。グリーン・ニューディールに代表される、環境対策技術の開発がにわかに換気され、「グリーン」を切り口とした商品、サービスのイノベーションのインセンティブとして、エコカーへの減税など、需要刺激策の検討を日欧米いずれの先進国も進めている。
一方、雇用に目を向けると、求人倍率は1倍を切ったと言われている。新興産業と、それを支える人材にアンマッチがその原因ともいわれている。
経済変動が激しい昨今のグローバル経済下では、需要刺激策とともに、つねに供給面からの構造改革が求められる。日本の産業構造は、この要求に応えるために、より柔軟であるべきではないか。日本経済新聞の西條都夫編集委員は、「産業再編機構」の必要性を説く。
今のような不況期は、「設備の過剰」や「プレーヤー(競合会社)数の過剰」を整理統合し、産業構造の進化を促す契機でもある。産業再生機構を手本にしながら、旧機構がゼネコン、小売など内需企業を対象としたのに対し、電機など輸出型産業の再編・再建に主眼を置く。資金や人材を供給してリストラを支援し、最後や債権や株式を売却して活動を終えるというモデルを倣えばいい。
その際、大企業だけでなく中小でも高い技術力を持つ企業には、技術を維持・継承するための再編を促す「再編減税」などの優遇策の検討も必要だ。
再編には、人材の流動性の確保も欠かせない。オランダモデルは、雇用の確保のモデルとして注目を集めるが、人材流動性を確保するメカニズムでもある。現在、オランダでは、金融危機で三割超売上が落ちた企業を対象に、【労組】時短勤務または一時休業へ移行、【企業】雇用と給与の7割を維持、【政府】3割分を補てん、という対策を進める。財政支出への限界もあり、協議の着地点は見えないとしながらも、「柔軟な雇用システムで危機を脱出できる」と自信を示しているという。三者間の連携により、グローバル経済でのコア・プレイヤーであり続けようという国家ビジョンがあるからだろうか。
ワッセナー合意により、フルタイムとパートを行き来する人が増え、転職支援のサービスも発達。産業構造の変化に応じた人材の移動を後押ししているという。休業中に、転職に備え再教育を受けることもできるため、雇用が伸びている分野への転身を目指す人も多い。さらに、勤め先が契約する人材会社の助言により、金融業から一転、チョコレート会社の起業を決意する人も。起業支援(事業計画づくりやパートナー探しなど)の費用は、勤め先の負担、政府はこれを補助金で間接的に支えている。
「正社員」「終身雇用」のモデルは切り崩されたが、これを支えるセーフティネットが不在の日本。まずは、産業再編を助長する、人材流動性モデルの構築は喫緊の課題である。
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