Inspired by NikkeiNews20100524 経済教室
「規制強化は企業の競争力を向上させる」---。政府が打ち出した25%削減目標の裏には、環境技術の優位性を確保する革新を誘発したいとの狙いがある。私自身、この理念を楽観的に受け止め、中長期での必要な技術試算を蓄積する取り組みと思い込んでいた。
慶応大学野村准教授は、IEA(国際エネルギー機関)の要求した水準の10倍、20倍もの価格付けを行えば、企業は大幅な投資拡大が求められる、政府は、これを財やサービス需要を誘発し、生産・雇用を増加させると想定するが、一国画と出した価格付けを行えば、企業は国内から海外への生産シフトをはかり、エネルギー効率の低い途上国への試算シフトは世界全体の排出量をむしろ増加させるパラドックス(逆説)を引き起こし、国内産業の空洞化、雇用の喪失を引き起こしかねない、と説く。
とくに、厳格な環境規制が競争力を高めるというポーター仮説は理念と実証面で大きな隔たりがあると警鐘をならす(たとえば、スウェーデン炭素税は生産性向上の証拠が見出せないという実証分析がある)。
氏の主張のポイントは一つ。温暖化ガス削減には各国の調和の取れた規制導入が欠かせないということ。途上国の規制も、資金や技術移転を促す動機となるし、途上国のエネルギー効率は原油価格の安定にもつながる。いずれにしても、低すぎる価格付けは気候変動リスクを正しく反映できず、高すぎる価格付けは国民負担を過度に増大することを記憶にとどめ、先進国か途上国の対立構図を超えたCO2削減の道筋を見つけていきたい
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