Inspired by Nikkeinews 20110322 経済教室 堺屋太一氏
堺屋太一氏が、非常事態策の手順を整理して示してくれている。原発の不安が続き、未来にむけた議論が生まれにくいが、潮の目や時勢をみることも大事であることを教えてくれる。
今回のような災害非常時対策には、救助―救済―復旧―復興―振興の5段階がある。いまだからこそ、長期的な視野を持つ必要があり、けっして方向を誤ってはならない。
具体的な段階については、下記のように説明を加えてくれている。その上で、今後重要となるのは、横断的な会議体。その特徴として、三つをあげている。
- 既存の枠組みを超え、各機関の利害から離れて、復興に向けた予算や政策の「司令塔」の役割を果たす
- 時間の長短を超え、目前のことと遠い先のことを等しい尺度で考えてプロデュースする。今時の復興では、一時の非難を恐れず、究極の成功に達する道を探す
- これまでの経緯や利害にとらわれない。原発事故も、ダメージコントロールを軽視した官僚基準主義の限界が露呈。脱・縦割り主義をリードする
復興院の設置がその解の一つであるが、政府に限らず、横断的姿勢、短期を忍んでも長期の利を求める説得力などが求められるタイミングではないか。民間でも、勇敢に過去の利害にとらわれない、非難を恐れず周囲を説得するリーダーが活躍できるよう、環境を整える必要がある。
下記は、非常時対応の五段階の詳細––––––––––––––––––
救助:震災発生から初動の約10日間
非常時の5段階は「軽いものから先に」が原則とされる。最も急ぐ「軽いもの」は情報だ。人命を救助しようにも、原子力発電所のどこが損傷しているのか把握しようにも、さらには避難した被災者が生活を維持しようにも、情報がなくてははじまらない。
携帯電話やインターネットで情報が簡単に手に入る世の中で、非常時の情報収集がいかに難しいかという視点が忘れ去られていた。まずなすべきだったのは、上空から被災者の有無を確認、通信機器を持った消防・自衛職員を配置することだった。
第二は、飲料と医薬の配布。ついで緊急の食料である。その次が燃料と衣料、それから第三が安全な生活空間の準備とそこへの搬送、そして仮設住居の提供となる。
救済:震災後約一ヶ月間
道路、水道、衛生、電力、ガスなどのライフラインの応急修理を急がなければならない。大事なのは速度。最低限のライフラインをつなげるリミットは1カ月以内。1964年の新潟地震では、全国から消防ホースを集めて飲料水を配給した。95年の阪神大震災では、大阪からオートバイで食料を運んだ。1回60キログラム、1日2往復。それでコンビニが開けた。
復旧:一ヶ月後
水道、道路、電力、鉄道などを旧(もと)に復すとともに、店舗や飲食店を再開させ、日常生活を復元させることが必要だ。
また、この段階では精神的安定やコミュニティーの再建創造が求められる。それには楽しみと希望を創る視点も必要だ。救済復旧には地域や家族の立場で差があり、「それどころではない」との感情も出るだろうが、社会と人心の再生には、明るい未来の姿も想起することが大事である。
復興・振興にむけて:
特に今回は、原子力発電所の事故発生で、東日本全体に長期にわたる電力不足が生じるだろう。ここで電力をどこにどのように優先的に配分するか、その順位付けをするのは重大な問題である。ここでは、利にこだわらず情に流されず、経済社会の合理的な総合判断が必要だ。日本の財政・経済はもちろん、国民の士気やこの国の多様な文化性をも考えねばならない。
この順序をどう選択し、その合理性を国民に説得することこそ、復旧から復興へ、そしてさらなる振興・発展へと展開していく過程で、最も重要かつ困難な仕事である。
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