ゲーミフィケーションとは。単純な定義をおさえるとこのようになる。
他の参加者と競ったり、アイテムを集めたりするゲームの要素を、集客など別の課題の解決に使う手法。楽しんで続けられるようにすることで、利用者のつなぎ留めや増加を図る。
航空会社のマイレージシステムのように、より多く集めたい潜在意識を使って、利用者の消費を促すのもゲーミフィケーションの一種。海外では高速道路のスピード違反を取り締まるため、制限速度以下で走った車の運転手を対象に、金品があたる「くじ」をつくった例もある。
企業内部の生産性を高める仕組みにも活用されている。米国では業務活動をゲーム形式で点数化し、社員のモチベーションを高める試みも取り入れられている。提供するセールスフォース・ドットコムは「今後3年で企業の利用が増大するだろう」とみている。
Revered from 2011/10/12 Nikkeinews
このブームの仕掛人はなんと女性ゲームデザイナー。ジェイン・マクゴニガル氏は「幸せな未来は『ゲーム』が創る」(早川書房)を通じて、「世界中の人々は、もっとゲームをするべきであり、そのゲームの内容を現実世界とつなぎ合わせるようにデザインすることで、ゲームを通して日常生活から未来まで、世界をよりよく変えていける」と論じている。
ゲームが持っている力を、仮想世界のみに費やすのではなく、ゲーマーが獲得している新しい能力を、現実の問題の解決のために利用できるようにするもので「代替現実ゲーム=ARG」と呼ばれる。ゲーマーの能力を引き出せるゲームをゲームデザイナーが創ることで、現実かゲームかという、どちらかの問題ではなく、両方を統合してよりよい世界に変えられる方法があるとする。
家事をするとポイントが集まる「Chore(雑用)Wars」などの日常生活を対象としたものから、今までの組織論を超えた組織像で複雑な社会問題を説くゲームプラットフォーム「スーパーストラクト」まで幅広く、ARGの応用が広がっている。
スーパーストラクトとは、参加者が2019年にいると想像し、23年後に人類が破滅する可能性があるいう状況下で、その問題をどうすれば解決できるのかということを考えることを促す議論ゲームだ。
病気、飢餓、電力をめぐる争い、テロ、環境といった不安定で複雑な問題を解かなければならない。2019年の自分の仮想の略歴を作成し、自分の能力がどのようになっているかを想定して、他のユーザーと共に議論に加わる。
大きな危機に対抗するために今までの組織の常識を超えた「スーパーストラクチャー」という組織を作らなければならない。これは既存のどんな組織にも似ていないもので、活動規模が過去にない組み合わせによって構成していることが求められる。しかも、問題に対して、的確に対応しなければならない。
すぐれた提案や、他のユーザーへの協力によって、サバイバル力ポイントが貰えるようになっている。このポイントを通じて、お互いが競い合い、そして、協力して作業することが推奨されている。全世界9000人あまりが6週間参加し、プレイヤーが語ることで1000以上のストーリーを生み出し、未来予測レポートを何十本も書けるほどの大量の資料が集まったという。また、19人のプレイヤーがゴールとなる100ポイントに到達し、現在もシンクタンクと共同作業を続けているという(Refered from Nikkeinews 2011/10/19)。
マクゴニガル氏は「ゲーミフィケーションを機能させるには4つの要素が必要だ」とする。。(1)自ら達成したいと感じさせるための「しつこいまでの楽観性」、(2)あまり負荷をかけずに新しい能力が得られていく「至福の生産性」、(3)ユーザー同士が自分の居場所を確かめられて、それが次のモチベーションを生み出す「ソーシャル性」、(4)未来や世界といった壮大なスケールを持ち、関わることが楽しくなる「ストーリー性」――。これらを組み込むことで、ゲームユーザーに自らのプレーに対する責任を感じてもらえるようになるという(Refered from 2011/3/31 Nikkeinews)。
2011/8/10 7:00日本経済新聞 電子版
「ソーシャルゲーム1.0」が終わったならば、「2.0」とはどんなものなのだろうか。
チャン氏は「生活に密着して入り込んでくるようなゲームシステム」という。これは「ゲーミフィケーション」とも呼ばれ、ゲームのノウハウを人々の日常的な活動に応用するサービスの分野に広がっていくものだと定義した。その上で、「ゲーミフィケーションは、ユーザーの忠誠度やCRM(顧客管理)、ユーザー行動の分析のツールをきちんと持っているものや、人気のソーシャルゲームが持つ要素と同じものが組み込んであることが重要になる」と指摘している。
具体的な例として、NVPが投資している「脳トレ」を学問的に応用しようとしているサービスのlumosityや、心拍計などを組み込んだ時計を通じて健康を管理するサービスのbasisや、実際にギターをスマートフォンで学べるようなゲームを開発しているRockProgidyを紹介した。
また、社会行動を変革するためのゲームも今後の注目を集めていくだろう。たとえば、このようなストーリーにワクワクするのではないか。
ゲームのプレーヤーは、2020年に社会が直面する危機について解決案を模索して、他のユーザーと議論や協力をしながら現実世界でできる行動を考えるように促される。テーマは「食の安全」や「電力不足」など週単位で変わり、解決策や2020年の予想、現実世界で実行したことなどを投稿していく。投稿内容には他のユーザーからポイントが付き、自分のアイデアへの評価を知ったり、相対的な位置づけを理解したりできるようになっている。
このゲームは10週間続き、世界130カ国・地域以上から1万9893人が参加した。ゲームをきっかけに、フィリピンでは初等教育に取り組む企業が生まれ、南アフリカでは貧困層の子育て環境を改善する取り組みが始まるなど、発展途上国を中心に20以上の社会プロジェクトが立ち上がったという。
今後の応用先として注目を集めるのは、TV広告の代替である。
一部の大企業はオンラインゲームの利用者急増に着目。同じようなゲームが自社運営のサイトで遊べるようにすることで、閲覧者を増やそうとしている。「企業によるゲームのオンライン配信は、制作する側にとって魅力ある新たな市場」(YourGamesの黒木涼平取締役)という。
スマホで遊ぶゲームをつくったパンカク(神奈川県藤沢市、柳沢康弘社長)は「スマホでゲームを楽しむ人が増えている。ゲームはテレビコマーシャルに代わる集客や広告の手段になりつつある」(柳沢社長)と指摘している。
Refered from 2011/10/12 Nikkeinews
これらの「ソーシャルメディアモニタリング」や「口コミソーシャルマーケティング」などと呼ばれている新しいマーケティング仕組みはユーザーの行動を正確に把握し、企業が顧客との長期的な関係を築くという点で、この手法は面白い。
ゲーミフィケーションの著者、GLOCOMの井上氏は「測るテクノロジーが普及することでゲームの展開が日常のありとあらゆるところに浸透してきた」と述べている。「ゲームにしやすいのは数量としてカウントしやすい物だ。ソーシャルゲームは友だちの数を数値としてカウントできるSNSというプラットフォームの上でこそ、初めて機能した。電気使用量、消費カロリー量、家計簿、体重の増減など、人の生活のなかには、実はカウント可能なものが数多くあふれている」と語っている。
どんな行動をカウントし、社会の善行動を増やしていくのか。そのデザインは私たちの市民精神にゆだねられている。
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