昨今、裁量労働のあり方をみなす動きが広がっている。成果主義型の賃金制度の広がりや働き方の多様化の流れをふまえ、「一日八時間・週四十時間」を上限とする労働時間規制の緩和が進んでいる。現在の労働基準法は、もともと工場労働者らの健康を守るために導入された規定であり、知識集約型産業の広がりや企業活動のグローバル化などに伴い、雇用環境も激変している。労働時間の長短が業務の成果と比例しないホワイトカラーの社員が増えている現状に、規定を見直す動きが強まっている。
■『裁量労働、中小企業でも使いやすく』 Inspired by Nikkeinews 20061226
厚生労働省は、会社員の労働時間規制を柔軟にする「裁量労働制」を中小企業が使いやすくする。同制度は、企画など専門性の高い会社員に限って「みなし労働時間」で賃金を支払うというもの。一人が複数の業務を掛け持つことが多い中小企業では使いにくいとの声を受け、法律改正を行う。
対象業務は「企画」「立案」「使用者が仕事の進め方、時間配分に具体的指示をしない」ものに限られる。
■『労働時間規制の一部除外、企業、早期導入に意欲』 Inspired by Nikkeinews 20061228
厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会は、働き方の多様化に対応する新たな雇用ルールの最終報告をまとめた。報告は、一定の年収をこす従業員などを対象に労働時間規制の除外(日本版ホワイトカラー・エグゼンプション)の導入を提言した。新制度の対象となる従業員は自らの裁量で働く時間を自由に決められるようになる。代わりに残業代は支払われなくなる(最終報告では、「労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事する者」「年収が相当程度高い者」など、管理職に近い裁量権を持つ知的労働者が対象として想定されている)。
経済界は知的頭脳労働者への一律の時間管理をやめることが、柔軟な雇用や企業の競争力強化になると主張。一方、労働界は「残業代の節約」「労働強化につながる」と反発している。焦点の一つである、除外対象者の年収は年収800万円-900万円程度を念頭においているという。
また、雇用契約の基本となる「労働契約法」の新設も報告に盛り込まれているが、目玉である「解雇の金銭解決制度」は検討不十分として議論先送りとなった。日本の雇用規制は、年功序列型の雇用制度を下支えする仕組みとして、米国などにくらべて相対的に厳しい。経済界からは、労働市場の流動化を阻むとして改善の声が強い。
■ポイント1 除外制度と裁量労働の違い
裁量労働は、労使であらかじめ決めた労働時間を実際に働いた時間とみなす仕組み。働く時間の自由度は増すが、あくまで原稿の労働基準法の枠内。このため平日の午後十時以降や休日の勤務には割り増し賃金が発生する。
除外制度は、労働時間の長短ではなく仕事の成果で賃金を決めるのが基本的な考え方。残業の概念がなくなる。
■ポイント2 過労懸念への対策
対象者を限定する、「週休二日相当以上の休日を付与」「月八十時間以上の残業で意思の面接指導」などの健康管理の義務を企業が負う、違反企業は禁固刑も・・などの対策が想定されている。
しかし、過労死した人を調べると、直前に休日返上で働いていた事例が多い。欧州では、「退社から出社まで十一時間の間隔を置く」といった規制もある。過労防止策は、労働者個人の努力ではなく、組織的な取り組みが求められる。
■ポイント3 賃金水準の低下懸念への対策
残業代を含む現在の年収がそのまま除外制度適用後の年収となり、原則的には賃金は減らない。ただ、企業が時間をかけて賃金水準を切り下げる懸念もある。
賃金決定の透明性向上が重要課題となる。
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本制度の導入にあたっては、労働者の意識変革が必要だ。昨今、30代の社員の繁忙感が社会問題として捉えられいてるが、一方で労働者の間に、「忙しく働くことが、かっこいい」というゆがんだ価値観があることも見逃せないポイントである。
自分の周辺でも、「最近は、あまり忙しくないよ」と話をすると、「そういうときってあせらない?」というコメントが返ってきて驚いたことがある。繁忙感に嘆きつつも、忙しくない自分には焦燥感を覚えるという30代の感覚。組織に依存した感覚を覚えて、ドキっとさせられた。本制度導入の鍵は、「賃金水準を低下させないために、自分の価値を向上する」意識を労働者が持つことだ。日々の繁忙感に流されず、大局的に自分の価値を見直す。経験の幅を広げる。知的労働者として働く上での、機会とリスクを、労働者自身が語り合い、気づいていく必要がある。
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