Inspired by Nikkeinews 20061229 経済教室 榊原英資早大教授
榊原教授は、現在起きている格差問題の本質は、「産業資本主義がポスト産業資本主義へ移行するなかで生まれている主要な変化の一つ」とする。
ポスト産業資本主義についてリファーしよう。
岩井克人東大教授は『会社はこれからどうなのうか』(03年)で、「お金で買えるものよりも、お金で買えないヒトの中の知識や能力のほうがはるかに高い価値を持ち始めている」ことがポスト産業資本主義の特色であると指摘。ここ二十年間に、米企業の資産構成はきかいや設備・建物といった有形資産から、特許権、データベース、ブランドなどの無形資産へ大きくシフトしていることを表すデータを紹介している。それによると、1978年末には83%だった有形資産が31%にまで減少しているという。
この間に上昇したのは、「知識資産」。知識資産の価値が上昇するということは、人間の価値が上がっているということだが、他方では能力や知識のある人間とそれを持たない人間の格差は広がっているということを意味している。つまり、能力や知識を持ったプロの価値は上がるが、機械やコンピュータで置き換えられる労働の価値は下がるということなのだ。
つまり、格差問題とはミクロな学歴間賃金の格差、年齢間賃金の格差の問題ではなく(実際にデータとして拡大していない)、マクロの格差の問題であり、若い世代ほどの不平等度は高くなっている。若い世代に多いニートやフリーターなどの非正規雇用社員が担ってきた労働は、グローバル化、アウトソーシングの流れを受けて、ますます価値が低下する。
ここで問題のなのは、若いうちから人口の一定割合が貧困層として定着していまうことだという。本来、ポスト産業資本主義における能力主義、知識重視の傾向は、階層間の流動性を高くする要因であるが、しかし日本では政治にても、産業にしても、二代目、三代目の跋扈(ばっこ)がめだつ。榊原氏は、この原因を能力差による格差を認めない悪平等主義になると指摘する。
「ポスト産業資本主義時代には、個人、企業、国家にとっても最も重要なのは「知識資産」を蓄積すること。そのためには教育こそが社会の中心に据えられるべきである。しかも重要なのはフェアな競争を確保することである。」
「人間や知識が重要になっている時代に、格差の理不尽な拡大で、人間が粗末にされるというパラドックスをいかに乗り越えるのか、二十一世紀最大のチャレンジであろう」
むむむ、チャレンジングスピリットが沸いてきた!
最近のコメント