Inspired by Nikkeinews 20061212 経済教室 『労働契約を考える 上』
自由度の高い働き方にふさわしい労働契約のあり方とは・・・。
安藤至大(むねとも)日大教授は、労働市場の競争原理を活用できるよう、環境整備を行い、労働の自治にゆだねるアプローチを主張する。労働側が指摘する、不当な過酷労働、低賃金労働を回避しながら、自由度の高い働き方を実現するための示唆を与えてくれる。
- 企業は優秀人材の獲得、留保の面でも市場競争を行っている。労働市場でも、企業間競争が健全に行われるよう、契約交渉の透明性向上、第三者への可視化が肝要
- 労働者の待遇は、各社異なる。一時的な低賃金を指摘するのではなく、生涯全体で見た賃金と生産性の比較考量での判断が求められる。
- 一方、「自分の健康状態をうまく管理できない、精神的に追い詰められて適切な判断が下せない」という労働者が一定程度存在することを認識し、このような弱者には業務と疾患発症の裏づけのあるデータを用いて保護する。
- 弱者保護は不可欠。しかし、手段が正しく運用されているか、考える必要がある。
- 残業手当は、使用者が残業を控えるという効果があるだけでなく、残業代があるからこそ、労働者が望んで残業するという可能性がある
- 労働時間規制があっても、実績づくりのために家に仕事を持ち帰ってでも仕事をしようとする人はいる
- 弱者保護といっても、現在の正規雇用者の利益を守ろうとすれば、非正規雇用者を企業は利用しようとする。正規・非正規雇用者間の格差を是正しようとすれば、労働力を海外に求める可能性もある。保護がかえって労働者の首を絞める可能性もある。その点で、正社員はすでに既得権者である
本主張は、経済成長を優先し、そのためにも流動性や透明性の高い労働市場づくりが肝要との指摘である。着手すべきはミクロな労働契約交渉ではなく、マクロな視点で雇用保険を一国全体で負担し、経済成長性の高い市場に人材を流動しやすくする取り組みである。
本制度は、働き方の多様化を促進し、少子高齢化時代のワーク・ライフ・バランスを根付かせる取り組みとしても期待される。その場合、ITなどの環境整備とともに、社内公募を含む、社内外で流動性の高い環境整備が肝要との本主張は大変示唆深い。
※ワークライフバランスを推進する上で、共感できるメッセージ。「少子は女性の出産意欲の低下が原因。児童手当や税控除などの効果を否定はしないが、それだけでは出生率は高まらない。フランスはほぼ四十年かけ、男女が平等な社会形成に尽力してきた。日本はそこに注目すべき」(フランス首相府戦略分析センター社会問題担当局長)
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