07年春闘にむけて、主要な労働組合が、「ベースアップ」という表現をやめて、「賃金改善」という言葉を使い始めた。
- ベア: 社員全体の賃金水準を一律に引き上げること(年齢や評価に関係しない)
- 賃金改善: 若手や中堅の特定の層や、一部の職種に限定して賃上げするなど、配分にメリハリがある(賃上げ原資の配分で柔軟性が高い)
この動きの背景には、経営側が一律な賃上げを強く抵抗しているという事情がある。組合もベアゼロが02年以降続いた現実も踏まえ、従来とは異なる切り口を求めていた。
一方で、全組合員を代表する労組は、大胆な傾斜配分を要求することは難しい。特定層の賃上げを強調すれば、恩恵に浴さない組合員の反感を買う恐れもある。
この点に、従来型労働組合の限界がある。労働組合のパワーソースは、「現場の社員の声の総体」である。全世帯中流化をめざす時代には、全体の「ベア」を主張する主体として労働組合はきわめて有効に機能していた。
一方、現在は経営者も、さらには労働者の中にも、ナレッジ・ワークにふさわしい、メリハリのある(多様性と柔軟性のある)働き方を望む声が高まっている。これを実現するには、労組は、「声の総体」という人数規模のパワーベースに依存した姿勢から、「資産価値の高い生産財(=社員)」というパワーベースを重視する(市場原理)×社員の資産価値向上施策を提案する(セーフティネット)姿勢へとシフトしていくことが求められる。
一番のチャレンジは、「労働組合」というアイデンティティを社員自身が創造的に破壊(リストラクチャリング)できるかどうかにある。とくに、参加形態の進化が鍵を握る。
従来どおり、社員が主体者である側面を強調し、全員で提案を検討、賛否をとるメカニズムが望ましいのか。あり方を抜本的に変えて、社内コンサルや社内社会事業体として、サービスを提供するのも、一つの選択肢である。その場合の役割は・・・
- 「ナレッジワーカー(生産財)」としての資産価値を、労働市場視点で証明し、フェアな対価を請求する
- 「ナレッジワーカー」の資産価値を高める施策(フェアなプロセス/アサイメント)を提案し、達成度を監査する
- 個人が働き方を自己選択する意識を高める、組織的にはメリハリ(多様性・柔軟性)のある働き方を実現する意識を高める、そのための運動を起こしていく
以上のように整理すると、「**LU」という事業体は、経営者、労働者のいずれもがスポンサーになりうる。しかし、「フェア=中立性・公正性(≠平等性)」であることが存在論的に重要な要素だとすると、労働者による投資システムが合理的だと思われる。松坂のMLB移籍劇で活躍した「交渉代理人」モデルが、当面のベンチマークになるのかもしれない。。
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