Inspired by 20070328 経済教室
「もの造りとは、顧客にいたる『設計情報のよい流れ』を作る活動」の総体である」。東大藤本隆宏教授のイノベーション論である。シュンペータも、「イノベーションとは新設計による事業化」と説明している。この流れを制御する最小の単位が「現場」であるとし、イノベーションを生産性向上に結びつける主役はもの造り現場と主張する。
「開かれたもの造り」という新発想を重視し、その実現に三点が重要と指摘する
- もの造りとは「ものをつくること」ではなく、設計情報を「ものにつくりこむこと」
顧客を満足させるために、設計情報のよい流れが進化し続ける、この努力をせいさんげんばだけでなく、開発、購買、販売も含まれる - 開かれたもの造りとは、製造業の枠を超えることである
付加価値の根源は、設計情報にあり、それが有形の媒体に転写されれば製造業、無形の媒体に転写され、顧客に発信されればサービス業となる。優良製造企業と優良サービス企業の相互学習ことが重要である - 開かれたもの造りの知識は、規制の産業分類を超えて共有される汎用技術
もの造りには、汎用技術(規制の産業構造の壁を超えて共有できるもの)と固有技術(電子工学、機械工学・・)がある。「固有技術で勝てれば日本企業は勝てる」とのハイテク偏重は、産業間の知識共有が阻害される。・・・(中略)・・・もの造り汎用技術の二本柱は、アキテクチュアー知識(設計情報のつなぎ方)と、もの造り組織能力(設計情報の上手な流し方)。業界の枠を超えたもの造り汎用知識の大々的な移転を、競争不全部門へ導入することが鍵である
藤本教授の主張の焦点は、「汎用技術」にある。現場にある固有技術の強さの議論と、誤解を受けることが多いが、製造業とサービス業が同じ設計情報から生み出されるという主張からも、メタな知識の獲得、共有から、顧客に向いた最適組織を再構築しようという考えであることがわかる。
こうした組織の実現の推進者として、Deep Smart (もの造りの現場経験を持ち、他産業の人にも“もの造り技術”を教えることのできる人材)をあげ、彼らが非正規従業員や若手社員(20代)の底上げを図る、過労状態の中核人材(30-40代)の余裕を生み出す、経営層も自信を回復する・・・、そのようなアーキテクチャーを提示している。
これからのベンチマーキングのあり方を明示する、主張である。
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