Inspired by Nikkeinews 20080428 領空侵犯 山岸俊男北大教授
「国家の品質」が問われ、こころの荒廃が指摘される中、道徳教育復活の動きがある。山岸氏はこの動きを以下のように看破する。
「武士道や統治者の考え方。全体への奉仕者として無私の精神を解く一方、藩や幕府という閉鎖社会の中で集団を守るための論理である。だから対外的にはうそも認められる。グローバリズムが進む現代においては、取り残される」
「昔の人は正直だったというが、藩や農村などの閉鎖社会のなかで相互監視の目が厳しくすぐにばれるというメカニズムがあった。実際は仲間の不祥事に目をつぶることも倫理的に悪いことではなかった」
「今の日本は、面倒見のいい上司よりも仕事を評価してくれる上司が好まれる時代。この転換を見ずに閉鎖社会の倫理を持ち出すのはおかしい」
山岸氏は、江戸時代に武士道と並び存在していた“商人道”に着目せよと語る。
「武士道では、利益を口にする商人はけしからんとされ、倫理的に劣る人間とされていた。その折に、石田梅岩が唱えたのが商人道。相手に利益を与えながらも自分も利益を得ることは、倫理的に正しいという主張である」
「情けは人のためならず」という開放的な商人道の考えは、終身雇用や年功序列のなくなった現世には適している、と指摘する山岸氏。「倫理性は、説教や教育で根付く類のものではない。人間が倫理的であるのは、倫理的に行動すると、結果としていいこと、得することになってきたから」「社会に適応した過程で論理が身に付くのであって、押しつけることができるわけではない」
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