Nikkeinews 20060122 読書『女性と人間開発』に関する書評
格差に関する議論が高まるなかで、興味深い概念を知った。
ノーベル経済学者のアマルティア・センが編み出した、ケイパビリティ・アプローチ。平等、不平等を語るのに、財貨を持っている量や、効用の量ではなく、選択しうる生き方の幅(ケイパビリティ・潜在力)という多元的な焦点変数を設定すべきという主張である。平等を語るのに、普遍的な価値を与えようとすることはかえって抵抗を生み、社会を不安定とし、個人を不幸にするという考え方である。本書では、ケイパビリティのリストに次のようなものを掲げている。
?人生を最後までまっとうすること
?身体的健康(適切な栄養摂取、住居確保)
?身体的安全(暴力、性暴力、虐待の恐れがないこと、生殖に関する選択権)
?感覚・創造力・思考(考え判断できること)
?感情(愛せること、嘆けること)
?実践理性
?連帯
?自然との共生
?遊び
?環境のコントロール
こうした力をつけることが開発の目標であり、実践にあたっては、多様性を認め、弾力的、自主的に行うことを重要視している。多様性を実現する社会づくりの指標として、ケイパビリティ・アプローチがもたらす効用は大きい。継続して研究したい。
引用------------------------------
http://www.arsvi.com/1990/990000kt.htm
「センが強力に推進している《ケイパビリティ・アプローチ》をめぐっての問いかけ。これは、どれほどの財貨を持っているかでもなく、どれくらいの効用を感じているかでもなく、彼女/彼ができること・なれる状態、つまり「生き方の幅」(ケイパビリティ)でもって当人の暮し向きを評価するものである。ここで彼は、人間が自分の福祉の達成だけをめざすのでなく、他人の福祉や自分たちが帰属する社会のあり方にも無関心でいられない存在であることを強調する。たとえば、自分より福祉の水準が低い人に対して「済まない」(I'm sorry about him)と感じることがそうだ。さらに、現代の飢饉はせいぜい全人口の一割弱の住民に襲いかかる災禍に過ぎないのに、デモクラシーを採用する国ぐにで飢饉を防止する政策が多数派の支持を得るのはどうしてか。それは「餓死者が出るような社会に住みたくない」との望みが広く共有されているからに違いない。センはそう分析する。」
参考------------------------------
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4771014892/economic-22/ref%3Dnosim/250-1380815-3047458
『アマルティア・センの世界?
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