Inspired by Nikkeinews 20070110 経済教室 07年の指針 吉川 洋東大教授
「人口減少により成長力が減速する・・」この懸念を、吉川氏はこう指摘する。「それは一人ひとりの労働者が手に一本ずつシャベルを持ち、以前と同じ仕事をしているイメージからの類推だと思う」。たしかに、労働集約的な床屋ビジネス発想がこれらの議論の背景にあると感じられる。
たしかに経済成長にとって、人口増加はプラス、人口減少はマイナスだ。しかし、資本蓄積とイノベーションの方が、先進国の経済成長にとっては人口よりはるかに大きな役割を果たしているのである。
同氏は、人口減少下でも日本経済の実質成長率を二%程度になると予測する。これを理解するには歴史を振り返るのが一番と、日本の高度成長期(55-70年)に平均10%経済成長した際にも、人口増加率はわずか1%であったという事実を引用している。
シュンペータはイノベーションの具体的な内容として五つ挙げた。
- 新しいモノ・サービスの創出
- 新たな生産方法の開発
- 新しい市場の開拓
- 原材料の新たな供給源の開発
- 新しい組織の創出
同氏は、「既存のモノや需要は必ず飽和し、経済成長を抑制する要因になる」とし、1番目の新しいモノ・サービス創出の重要性を説く。そのために、科学技術の進歩はもちろんのこと、新たな市場を生み出すソーシャルエンジニアリング(社会的なイノベーション)を重視する。
一方、イノベーションが格差を拡大させる可能性について、以下の指摘を行っている。
- イノベーションは格差を拡大するが、長期的にはすべての人の経済厚生を一様に引き上げていると歴史は証明している。
(馬車屋の倒産を理由に鉄道の発明を非難しない、イノベーションの恩恵が長期的には社会全体にいきわたると理解しているから)
- イノベーションの不足による経済の長期停滞こそ経済格差を生み出す重要な原因である。経済の長期停滞で大きな打撃を受ける人は、経済的弱者である
よって、重要であるのは、イノベーションの「担い手」があらゆる分野に存在し、持続的な経済成長、新たな雇用の創出社会づくりとする。「イノベーションの担い手である偉大な「企業家」は自ら社会的役割を十分に理解している」と大衆のための自動車を創出すると同時に、破格の日給、八時間労働制を導入したヘンリー・フォードの例を引用している。
シュンペータは、イノベーションの担い手としての「企業家」を次のように語っている。
- 企業家が金銭的動機を持っていても、それは二義的であり、自らの夢を実現することが企業家を動かす根本の動機である
- 企業家とは、「新しいこと」をやりとげる人であり、経営者といった特定の職業をさすものではない。むしろ人間のタイプである
吉川氏は、上記にふれ、経済成長の根源をたどれば、人の数ではなく、人の質、人材こそが、経済成長に重要であるとまとめている。
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