8月の失業率。年代別に見ると、悪化が目立つのは45歳から64歳の中高年層。雇用調整の波が正社員に広く普及し始めたことろ物語る。
8月の失業率。年代別に見ると、悪化が目立つのは45歳から64歳の中高年層。雇用調整の波が正社員に広く普及し始めたことろ物語る。
公開会社法の制定は、マニュフェストには入らなかったものの、継続して検討が続いている。経営や組合など、財界へのインパクトも大きい。
リーマンショック後、従来とは違う枠組みで上場会社の企業統治や企業再編のあり方、資本市場や税制のあり方の包括検討が期待される。
適切で効率的な企業統治の確立と、企業再編を通じた経営資源の再配分の活性化・・・。これに向けては、省庁横断の議論が不可欠とされる。
垣根を越えた真剣議論の場がどのように広がっていくのか、今後が楽しみだ。
Inspired by Nikkeinews 20090902 経済教室 御厨(みくりや)貴 東大教授
自民党は、長年の与党生活の中で国民に対し包括委任を迫ってきた。具体的政策を優先順位をつけて掲げる(マニュフェスト)が自民党は苦手なのだ。自民党は、選挙のたびに国民から「包括委任」を受け、相矛盾する政策でも、それをそつなくこなし、またつぎの選挙で国民に包括委任を迫るというサイクルを描いてきた。
これは政治家と官僚システムがうまくかみあっていた右肩上がりの時代には、もっともうまく機能していた。
だが右肩下がりの時代、国民から包括委任を取り付けるのは難しい。なぜなら、第一にパイは増えず、第二にパイをどう分配するか、優先順位をつける必要が高まったからである。
今回の選挙では、さまざまな諸説が流れたが、御厨教授はこう分析する。「小選挙区制のもと、劇的な変化がおきやすい、二大政党時代の訪れ」でもなく、「マニュフェスト選挙」でもない、ましてや「55年体制にかわる09年体制が確立した」わけでもない。この選挙の本質は、“自民党パージ(自民党的なる日本への嫌悪感)”であり、(企業献金で政治との関係性を築いてきた)財界、(自民党との間に特殊の関係性を構築してきた)官僚制度ともに、大きな変容が求められているという証である・・・。
とくに、民主、自民の違いとして特徴的なのは「給付の仕組み」であるという。自民が間接的に給付を行い、中間搾取や天下り期間を介在させるのに対し、民主は直接給付で中抜きを図る。
難しいのは、いかに限定されるパイのなかで、優先順位をつけるか、という点にある。
伝統的には、自民党は「汚職、貧乏、暴力の三悪追放」という内政課題を掲げた岸信介政権(国民年金制度や治安対策を実施)や、所得倍増計画と農業・中小企業の保護などを同時に推進した池田勇人政権、列島改造を進めた田中角栄内閣、田園都市構想、文化の時代を標榜した大平正芳内閣、国鉄・電電公社民営化を進めた中曽根康弘内閣など、広範な内政課題に、包括的に対処することで、実績を重ねてきた。
これには、官僚の補佐が必要不可欠で、重要な施策は首相周辺のアイディアでも、政策の細部は、作成・実行ともに官僚のイニシアティブにゆだねられた。
これが、自民党政権の官僚主導の政策形成だった。しかし、アジア通貨危機に直面した橋本政権は、旧来型のモデルにのっとり「六大改革(省庁再編、財政構造改革、社会保障改革、教育改革などの包括的改革構想)」を進めていたが、アジア危機を回避することができなかった。包括的政策モデルでは、世界経済のグローバル化による危機の加速的波及に、機動的に対応しきれないことを学んだのである。
小泉内閣が推進した「構造改革」は、一見従来の包括的政策のようで、構成は異なるものである。郵政改革、高速道路の民営化、産業再生気候の設立などは、多数の政策を実行可能性をかんがみ、矢継ぎ早に実行したもので、後からつなぎ合わせて「構造改革」という絵になるとしたのである。
今後は、「実行可能性」という観点と「事後包括的」という観点が、政策構想・実行の鍵を握りそうだ。
ドイツの哲学者ハーバーマスは、18~19世紀の欧州で知識階級が集まるサロンが世論を形成する公共圏となり、民主主義の土台を作ったと論じている。
京大大学院の吉田准教授は、「SNS、ツイッターなどのネット上の対話の場が登場したことで、公共圏が復活しつつある」と見ている。オバマ大統領は大統領選にSNSを駆使し勝利を獲得した、イランの混乱をCNNが取り上げたのは抗議メッセージを世界に伝えたツィッター上で「なんでこのデモを報道しないのか?」という声が広がったからだった。このような動きから、「多様なネットワークによる情報交換が世論を形成し始めている」と考えてもいいだろう。
対話参画者の広がりという点で、大きな影響を与えたSNSだが、対話の質という点ではどうだろうか?質を考える上でヒントとなるのが、スウェーデンの政治学者、ヨアキム・オーストロームの、「民主主義の三段階」だろう。
現在のような一人ひとりが自分を開示し、語りかける姿勢は、透明性確保につながっている。マニュフェストなどは、さらに上の「単純だが判断を求める材料を示す」点で重要な役割を果たしている。それでは、素心深考のダイアログという点ではどうだろうか。現時点では、いまだこのレイヤーに到達できていないが、多いに可能性がある。
対話への参加者の窓口を拡大した、ネットという新たな公共圏。この公共圏を本物にするために、素心深考のダイアログのあり方が問われている。
現在のEMS(ISO14000)は、どうにも創造性が感じられません。推進組織が掲げる右肩あがりの目標、その基準のなかで窮屈な活動が求められる現場(昼休みに電気を消す、裏紙を使うなど)、漸次的な改善があるのみで、ダイナミックな結果を得られない実態。
そんなことに悶々としていた折、同書に触れました。ブレトンウッズ体制が描いたビジョンの限界は、貧富の格差、環境、テロなどさまざまな問題を生み出している・・・、本書は「現在という歴史上のこの時点において、国家や市民社会ではなく、営利を目的とする企業こそが人類を持続可能な社会へ導く鍵を握っている」と主張します。日本の社会起業家は、MNC(Multinational Corporation)にあり、という自分の仮説を後押ししてくれる著書です。
企業は変化を起こす強力な主体であり、政府や強い市民社会と連携して、より持続可能な未来を築く能力を備えている。
しかし同時に、企業に存在する「短期」と「長期」という本質的な矛盾や、持続可能性への前向きな取り組みと過去の投資や古い(しばしば持続不可能な)習慣とのバランス問題についても本書は指摘している。
今、我々の釈迦いはかつてないほど、気候危機、貧困、世界的疫病、水不足、人口移動といった構造的・長期的問題に対処するための新しいモデルを必要としている。持続可能性の時代は到来したが、今我々は経済システム全体にそれを浸透させねばんらない。そのためには、企業の環境的・社会外部性をすべて考慮にいれ、資本が最善の用途に効率的に配分されるよう、市場を進化させなければならない。
Inspired by Nikkeinews 20090427 核心 コラムニスト土屋英夫氏
オバマ大統領がジョージタウン大学で行った経済演説。「上位1%の所得がロケットのように上昇し、平均的勤労家計の所得が減るような経済は長続きしない」と語った。ニューヨークでは、法務大学院卒の金融のプロが、職を失い、高額の住宅ローンを抱え、ドライバーの仕事に就くという人もいるという。かつての富豪妄想から目覚めて地道な暮らしを始める人々。
金融危機の前後で、「お金持ちを貧乏にしたところで貧乏な人がお金持ちにはなれない」というサッチャー元首相の言葉の意味は大きく変化した。老大国のエンジン再活性化のために進めた、公営事業の民営化、規制緩和、福祉の抑制・・・。「強者への賭け」と呼ばれる、新自由主義の価値観が、先進国から途上国へと広がった。
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技術革新が生み出した格差
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今では、格差を生む元凶とされる「強者への賭け」だが、1979年サッチャー政権発足当時は、現在とは異なる、経済・社会的課題を抱えていた。インフレと不況が同居するスタグフレーション、財政赤字、ストの日常化など、一部権益に偏った経済モデルがこう着状態に陥っていたのだ。この不満が爆発する形で、イギリス人の「鉄の女」支持エネルギーが広がった。昨今はケインズ離れが進むが、彼は70年代後半のこう着経済を動かすのは「不確実な未来に挑む、企業家のアニマル・スピリット」だ考えた。資本主義のエンジンとして、民営化や規制緩和など競争原理が働く市場の領分を広げ、企業家を奮起させるメカニズムの重要性を説いた。背景には、それ以前に「工業化による経済成長」が所得格差を縮小するというの経済理論が実証されていたことがあるという。工業化の初期には、格差が一時広がるが、農村から都市への労働力移動が定着すると部門間格差は縮まるとされた。
しかし、IMF(国際通貨基金)が2007年に出した「グローバル化と不平等」のリポートは、過去20年に世界の大半の国で格差が広がったと指摘した。技術革新、対外直接投資などの資本のグローバル化がその主因であるという。
「工業化」は格差を縮めたが、経済の「情報化」「サービス化」は格差を広げるのか?
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経済思想が生み出した格差
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一方、格差を左右するのは経済思想だと説くのはポールマン・クルーグマン教授。その象徴である税制や社会保障制度が肝だという。20-50年代、ニューディール政策の成果として、米国では格差の大圧縮が起きた。大恐慌以前に24%だった所得税の最高税率が、79%にまで回復した。現在の格差は、金持ち優遇の大減税を行ったレーガン政権の政策によるとする。
土屋氏は、「1970年代の英国国鉄では、合理化計画を提出しても労組に遠慮し政府が動かず、みすみす競争力を失った」という事実を当事者から聞き、当時は「強者への賭け」が正しかったのではないかとする。格差の原因も、技術革新と政治思想、その中間あたりに真実があるのではないかとする。
問題は、経済を喚起する企業家のハングリー精神と強欲(グリード)は紙一重であること。明らかに、情報技術の進歩に伴う金融の技術革新、金融業界の膨張が強欲をあおっていた。近年は、米有名大学卒業生のウォール街入りが増えていたというが、オバマ大統領は「全企業収益の四割を金融部門に依存する」「上位1%の所得が急伸する」「高額ボーナスや目先の利益を追う」ような砂上の経済からの脱却を、大学生に語りかけていたという。
ハングリー精神を喚起し、強欲を制御する・・・、そんな経済モデルへの模索が始まった。
Inspired by Nikkeinews やさしい経済学 國領二郎教授 IT時代の組織と情報戦略
IT産業の理解には、ソフトの二つの特徴の影響を読み解く必要がある。一つは、情報を複製することが簡単で、追加生産に必要な限界費用が極めて低いこと。もうひとつは、いまだに人手に頼ることの多いソフトの生産性の低さ(=ソフトがボトルネック)。
ハードの生産性がボトルネックであったころ、ハード専用のソフトを企業が独自に作っていた。しかし、ハードの性能向上により、システムコストに占めるソフトの比率が急激に高まった。その結果、ソフトを多くのハードで「使いまわす」必要が出てきた。使いまわしのインセンティブが働き、今日のIT業界では、業界の枠を超えたモジュール化された商品を売る、オープン化の動きが加速化された(携帯なども垂直統合で挑戦していた日本は、この波に乗り遅れた)。
アップストアは、アップル社が提供するソフトウェア販売サイトで、個人でも自分たちの制作物をアップロードし、販売できる。このような多様な主体が提供する商品や情報を結合して、大きな価値を生み出す基盤を、「プラットフォーム」と呼ぶ。
世界中に普及したプロセッサーのハードウェアも、クレジットカードなど事業者と個人を結び付けるものも、株式市場のようなオープンに出資者を募るものも、プラットフォームと言える。政府が用意するインフラや制度と異なる点は何か、それは、契約や技術を活用して、さまざまな仕組みを民間が創意工夫を加えることができる点で、進化し続ける基盤と言える。
国領氏は、「多くの主体を結び付けるうえで、大きな要因となっているのは、巧みな制約(=ルールの設計)である」という。
自由度が高いほど、多くの主体者が加わるわけでもない。クレジットカードなども、メンバーの審査や、支払などの明確なルールがあり、それが守られているという信頼が、利用者も安心して使えるし、お店も見知らぬ顧客に信用売りができる。日本古来の茶の湯の作法が、一見堅苦しい制約を設けながら、それが却って身分を超えた自由なコミュニケーションを成立させることを想起させる。
自由度の高いインターネット(=Openness)×適度な制約を提供してくれるプラットフォーム(=Policy)
「よりよいプラットフォームの構築」にこそ、Open Network社会の影を抑え、安心して利便性を享受できる鍵がある。
自動車と電機業界の不振が、日本経済全体への低迷に大きな影響を及ぼしている。グリーン・ニューディールに代表される、環境対策技術の開発がにわかに換気され、「グリーン」を切り口とした商品、サービスのイノベーションのインセンティブとして、エコカーへの減税など、需要刺激策の検討を日欧米いずれの先進国も進めている。
一方、雇用に目を向けると、求人倍率は1倍を切ったと言われている。新興産業と、それを支える人材にアンマッチがその原因ともいわれている。
経済変動が激しい昨今のグローバル経済下では、需要刺激策とともに、つねに供給面からの構造改革が求められる。日本の産業構造は、この要求に応えるために、より柔軟であるべきではないか。日本経済新聞の西條都夫編集委員は、「産業再編機構」の必要性を説く。
今のような不況期は、「設備の過剰」や「プレーヤー(競合会社)数の過剰」を整理統合し、産業構造の進化を促す契機でもある。産業再生機構を手本にしながら、旧機構がゼネコン、小売など内需企業を対象としたのに対し、電機など輸出型産業の再編・再建に主眼を置く。資金や人材を供給してリストラを支援し、最後や債権や株式を売却して活動を終えるというモデルを倣えばいい。
その際、大企業だけでなく中小でも高い技術力を持つ企業には、技術を維持・継承するための再編を促す「再編減税」などの優遇策の検討も必要だ。
再編には、人材の流動性の確保も欠かせない。オランダモデルは、雇用の確保のモデルとして注目を集めるが、人材流動性を確保するメカニズムでもある。現在、オランダでは、金融危機で三割超売上が落ちた企業を対象に、【労組】時短勤務または一時休業へ移行、【企業】雇用と給与の7割を維持、【政府】3割分を補てん、という対策を進める。財政支出への限界もあり、協議の着地点は見えないとしながらも、「柔軟な雇用システムで危機を脱出できる」と自信を示しているという。三者間の連携により、グローバル経済でのコア・プレイヤーであり続けようという国家ビジョンがあるからだろうか。
ワッセナー合意により、フルタイムとパートを行き来する人が増え、転職支援のサービスも発達。産業構造の変化に応じた人材の移動を後押ししているという。休業中に、転職に備え再教育を受けることもできるため、雇用が伸びている分野への転身を目指す人も多い。さらに、勤め先が契約する人材会社の助言により、金融業から一転、チョコレート会社の起業を決意する人も。起業支援(事業計画づくりやパートナー探しなど)の費用は、勤め先の負担、政府はこれを補助金で間接的に支えている。
「正社員」「終身雇用」のモデルは切り崩されたが、これを支えるセーフティネットが不在の日本。まずは、産業再編を助長する、人材流動性モデルの構築は喫緊の課題である。
Inspired by Nikkeinews 日本を元気に
イギリスはジョブカードの作成など、企業の人材育成能力を社会インフラとして活用している取組が注目されますね。日本企業の強みでもあるOJT力、社会全体の活性化にも活用できるはず・・。
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