Inspired by NikkeiBP 20080218
大量電池は日本が技術と市場の両面で世界をリードしてきたが、2007年でドイツの新興メーカーQセルズに世界首位の座を明け渡すこととなった。低迷する日本市場を尻目に、強力な補助政策で普及を進める欧州。次世代の環境技術の主戦場は、欧州にシフトした。
首位陥落の理由は。一つには、シャープが太陽電池の材料に使うシリコンの調達にシャープが失敗したこと。ライバルのQセルや京セラはシリコンメーカーと長期調達契約を結んだが、シャープはこの流れに乗り遅れてしまったため、原料不足で十分に稼働できないという事態に陥った。
大阪堺にシャープがつくるクラスターでは、シリコンの使用量を1/100に抑える薄膜型太陽電池の生産も予定されているというが、稼働が始まる2010年3月までは後塵を拝することになりそうだとのこと。
もうひとつの理由は、国内市場の低迷。日本では石油ショック後、石油依存への危機感を強め「サンシャイン計画」なる国家支援制度が創立され、国家支援が行われてきた。この補助制度は2005年度で打ち切られると流れが逆転した。
一方、ドイツでは「フィールド・イン・タリフ」と呼ばれる補助制度が導入されている。事務所や家庭が太陽電池で発電した電力を電力会社が市場価格よりも高く買い取ることを義務付けたもの。初期コストを補助する日本方式とは異なり、ランニングコストが補助対象となるので、太陽電池を導入した場合の利回りが計算できる。太陽電池が投資対象となっている。
同様の制度は、イタリアやスペインなどで欧州各国でも採用され、世界的トレンドになっている。とくに、海外では7割が産業用途であり、投資マネーが市場を活性化しているという。
40年以上の研究開発機関を経て、ようやく開花した太陽電池市場。しかし、現時点でその果実を得ようとしているのは、資金力と機動力に勝る海外勢。かつて世界をリードしながら、投資のタイミングを見誤り、衰退の道をたどった「日の丸半導体」と重なる。
1. 技術の成熟
太陽電池は、生産技術が成熟して、そのノウハウが装置に組み込まれるようになった。知術の蓄積がなくても専用メーカーから装置一式を買えばある程度製品はつくれるようになった。(ノウハウの装置化)
2. 投資競争
太陽電池の需要が急拡大して販売単価があがり、投資効率がよくなった。資金力があって投資判断の早いメーカーが台頭する下地ができた(太陽電池は装置産業なので、生産規模を早く拡大できた企業がコスト競争力をつけ、さらに規模を拡大する好循環がうまれる)
日本の半導体も、1980年代に高い技術力で半導体市場で上位を占めていたが、90年代のバブル崩壊で投資余力を喪失。その間に、韓国などの新興勢力に投資攻勢をうけて競争力を失った。装置産業の変遷は驚くほど軌を同一とする。
このような市場環境のなか、反攻のカギは新技術と見る。シリコンの変わりとなる化合物など、あんかな材料の開発、より多くの電力を蓄積できる電池の開発、変換効率を高める技術開発など、新・エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)による補助政策に期待がかかる。
また、内需主導の成長をめざす姿勢を強調している。現在の「フィールド・イン・タリフ」は、割高な太陽光発電のコストを国民全体で負担する仕組みであり、一種の税金とも解釈ができることから、今後、欧州各国がEUの企業を保護し、輸入に制限をかける可能性もある。かつての自動車、半導体産業と同様の道筋である。
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