「みんなの課長」では、サイトに登録された相談役(マネージャ)に対して、仕事上の悩みや問題などを幅広く相談する事ができるというもの。相談・質問に対しては、管理職の立場に属する相談役(マネージャ)が回答してゆくという、Q&Aサイト方式のバーチャルな空間(会社)をインターネット上に立ち上げた。
質問する側は、回答を、回答する側は、上司力を鍛錬する場として、活用者が拡大しているという。
「みんなの課長」では、サイトに登録された相談役(マネージャ)に対して、仕事上の悩みや問題などを幅広く相談する事ができるというもの。相談・質問に対しては、管理職の立場に属する相談役(マネージャ)が回答してゆくという、Q&Aサイト方式のバーチャルな空間(会社)をインターネット上に立ち上げた。
質問する側は、回答を、回答する側は、上司力を鍛錬する場として、活用者が拡大しているという。
Inspired by Nikkeinews 20070905 経済教室 船曳東大教授(文化人類学)
ロハス(LOHAS:Lifestyles Of Health And Sustainability)の提唱者、米国の社会学者ポール・レイ氏と心理学者シェリー・アンダーソン氏は、1986年から15年間にわたり15万人を対象に調査をした結果、全米の大人の26%(5000万人)が、ある明確な志向を持った層であることを発見。それは、40年前にはほとんど見られなかった新しい価値観、世界観、ライフスタイルだった。そして、この人々を「カルチュラル・クリエイティブス(生活創造者)」と呼び、“LOHAS”の中心層であると位置付けた(参考)。
このような、世界大の「消費」から「生産」までも視野に入れた経済行動、フェアトレードの広がりが意味するものは何か。船曳氏は、「モラルエコノミー」が働いていると指摘。これは「小さな村ような伝統的共同体では、人々は経済的な合理性とは異なる行動をとることがある」という概念である。個人の利益の最大化ではなく、相互扶助しながら村全体がともに生きるという伝統的なモラルに基づいて行動する・・・、これは既存の経済原理によらない、道徳に基づく経済と呼ばれるようになった。
個人の利益の最大化を図る合理性を超えた、高次の経済的合理性とはなにか、そしてモラルの経済の成立を可能にする条件は何かを考える。そのためには、「市場」よりも広い「世界」自体の永続を意識した、モラルの経済発想が不可欠と、船曳氏は語る。
※船曳氏は、モラルエコノミーの例として、ライブドアや村上ファンド、スティール・パートナーズ(ブルドックソースの買収劇の担い手)に対する批判的な世論を引用。スティールのケースでは、法律には抵触せず、市場の原理にのっとった活動でありながら、世間は割り切れるのモノを感じた。これは経済のモラルは犯していないが、自分たちの日常生活のモラルの感覚に抵触していることを表すもの・・と説明している。
本件は、心理学的見地から、セルフコンセプトが古い考え方に固定化している(=お金を稼ぐのには、お金を地道に貯めるのが一番)とも考えられるのではないだろうか。
Inspired by Nikkeinews 20070111 経済教室
過去の日本は、利益政治の構造であった。自民党の権力構造の変化は、その従属変数というべきものである。部分最適が、「見えざる手」によって全体最適に通じるという利益政治の神話をもはや誰も信じない。新たな全体最適政治を模索する必要がある。
利益政治には、ひとつの深刻なパラドックス(逆説)がある。それは、強い政治的意思で支えられた狭い利益ほど、もっとも強力であること。裏返せば、ぼんやりした国民の総意を背景にした利益は見かけ倒しであることにほかならない。
というのも、前者のような利益はいわばリターン(見返り)が鮮明で、多くの資源を投入することへの当事者のインセンティブが高く執拗な政治活動を後押しできるから。これに対し、後者は誰もが支持することと誰もが「ただ乗り」を決め込むことが同居する。しかもその政治的意思表示の機会は数年に一回。策を講じず、自体を放置すれば、部分最適の政治力学は容赦なくいき続ける。
佐々木毅学習院大教授は、広義の生産性向上のために、中央・地方政治の関係性を例に、地方が中央への依存から脱却するとともに、中央が地方との関係について、十分な管理能力を持つ必要性を説く。
「政治」を考える上で、示唆深い視点である。
ブレア政権が実現した成果の一つは、アングロ・ソーシャル・モデルであるといわれる。この政策は、米国型の市場原理にもとづく競争を前提として、北欧型の教育・医療・雇用政策を中心とした公共サービスでの政府の役割を強化することで、個人のインセンティブを引き出しつつ、生活の能力を高める手法。
ブレア政権の言葉を借りれば、単に弱者の生活を保障する「セーフティネット」の再構築ではなく、弱者を再び市場に送り出すための支援という意味で、「トランポリン」「スプリングボード(バネつきの板)と呼ばれる政策を実行。市場での個人の競争力を高め、経済を底上げし、失業問題や貧困問題、さらには少子化への対応を図るというもの。
彼らの基本構想「勤労を通じて経済的に自立し、貧困から脱出する」「教育により個人の市場対応力を高め、機会の平等を確保する」は、そのことを物語っている。
導入のかぎは、以下のとおり。
これらを実現した成功要因は、社会保険官庁と税務当局の一体化など、行政改革を同時進行することである。基準がばらばらな児童手当、生活保護、税金控除を根本的かつ総合的に考える視点が欠かせない。
ブレア政権の内政面での最大の成果は、グローバル化時代における福祉国家や社会的公正に関して新しい可能性を開いたという点にある。生活のリスクを社会化 するという時、二〇世紀に確立した年金、医療保険、無償の公教育、失業保険などの仕組みをそのまま維持するだけでは、二一世紀を生きる人間のリスクに対応 することはできない。若者が職業を見つけ自立すること、配偶者を見つけ子供を育てることなど、かつては当たり前であったことが社会経済的、文化的環境変化 の中でかなり難しい課題になってきている。普通の人間にとって生きにくい社会の中で、個人の自立した生活を支えるためには、経済的基盤だけではなく、個人 の能力を強化する支援策が必要となる。こうした難問に答え、労働党は小さな政府のアングロサクソン資本主義から、社会的英国経済モデル(Anglo Social Model)の構築に向かっている。 ※参照
平成18年4月28日 独立行政法人 労働政策研究・研修機構
教育訓練サービス市場の需要構造に関する調査研究
― 個人の職業能力開発行動からみる―
「就業者個人は、能力開発のために年間の労働時間のほぼ2~3%をあてている。その内訳は、勤務先の支援によるOJTが四割弱、自己啓発が六割で、総時間の1/4が資格取得のために使われている」
「なんといっても、専門能力を向上させたいというニーズが高く、次いで語学やOA・コンピュータ研修、資格取得に向けた能力向上のニーズが高い」
労働人口を取り巻くいくつかのレポートを、収集して分析してみたい。
平成 18 年 6 月 7 日
独立行政法人 労働政策研究・研修機構
これからの雇用戦略
-誰もが輝き意欲を持って築く豊かで活力ある社会-
全体的に、「本格的な多様な知恵の時代の到来」と、「経済活力を生み出す最も重要な要素となる「人」を中心に置く」ことを重視し、経済、厚生、教育などの諸政策の連携の必要性を説いていている。また、EU、OECDのナレッジソサイエティへの対応策としても興味深い。
※参考:EUの取り組み
「ルクセンブルグにおける雇用に関する特別欧州理事会」(通称「EU ルクセンブルグ雇用
サミット」)(1997年11 月)
雇用戦略の中核となる以下の①~④の4つの柱が示され、それ以降(1998 年~)の雇用政策指針に明記された
①エンプロイアビリティ(就業能力)
②起業家精神
③アダプタビリティ(適応能力)
④機会均等
将来、ICT の更なる発展等を背景にグローバル経済化がさらに進行していく中で、周辺アジア諸国等との競争が、製造業の基礎的分野中心のものから高度な技術を要するもの、さらには情報通信産業など高度な知識・技術が必要とされる分野にも拡大していくものと想定される。
こうした中、我が国は、近代工業社会・産業資本主義から多様な知恵の時代へと本格的に移行していくものと見込まれる。知識・技術・技能がより重視され、絶えざるイノベーションが求められる競争及び変化が激しい社会となり、所得格差が大きくなる傾向も強まっていく可能性がある。
また、少子高齢化の進行等により、労働力供給や財政面での資源制約が強まり、資源の有効活用がより強く求められるようになるととともに、地方分権が進展し、地方の経済に対する国の関与が減少すると見込まれる。こうした中で、裁量的財政政策により経済成長を図ることは困難化するとともに各地域において経済・雇用活性化のための努力がより求められるようになる。
さらに、我が国は資源小国であり、将来にわたって社会経済の運営に必要な天然資源を海外から輸入せざるを得ない。また、少子高齢化と人口減少が進行し、貯蓄の取り崩しが進んでいくものと想定される。こうした我が国の置かれた環境からすれば、経済社会の活力及び個人の生活水準を維持・向上させていくためには、製造業や金融、情報通信関連、コンテンツ分野などのサービス分野で生産性を向上させ国際競争力を高めていくとともに、国内向けサービス分野の質を高めることなどにより、国民全体が豊かになることができる社会経済を築いていくことが求められる
当機構において実施した労働力需給推計12によれば、今後、2030 年頃までの実質経済成長率を0.6~0.7%(1 人当たり2%程度)と見込んだ場合、労働力人口は、2004 年現在の6642 万人(労働力率60.4%)から、労働市場への参加が進まないケース13では、現在より約1050 万人減の5597 万人(同53.6%)、労働市場への参加が進むケース14では、現在より約535 万人減の6109 万人(同58.5%)となるとされている。そして、就業促進策を講じることによって、これを講じない場合と比較して、その減少を約500 万人程度抑制する効果が期待できると想定されている。労働市場への参加が進んだ場合でも、2030年には、現在より約500 万人以上減少することとなることに留意する必要がある。
全国ベースの労働力需給推計を前提とした地域別労働力需給推計15によれば、労働力人口については、労働市場への参加が進むケースにおいても、この間の全国の減少(-8.0%)と比較して北海道(-19.6%)、東北(-11.6%)、北陸(-14.8%)、中国(-12.7%)、四国(-15.0%)等ではより大きな減少が見込まれる。
全国の産業別の就業者数については、全体が2004 年の6329 万人から2030 年には5859万人へと470 万人減少する中で、医療・福祉では255 万人、金融保険業及び飲食店・宿泊業では約60 万人増加するなど第3次産業全体では約210 万人強程度の増加が見込まれ、他方、製造業で約475 万人、鉱業・建設業で約120 万人、農林水産業で100 万人の減少が見込まれる。
職業別にみると、専門的・技術的職業従事者(全体で約245 万人増。うち医療・福祉で120 万人増、製造業で55 万人増、情報通信業で約45 万人増、卸・小売業で約25 万人増)、販売従事者(全体で130 万人増。うち第3 次産業で110 万人程度増、特に金融保険・不動産業で約50 万人増、サービス業で約40 万人増、卸・小売業で20 万人増)、保安職業・サービス職業従事者(全体で約155 万人増、第3 次産業、特に飲食店・宿泊業で約95 万人、医療・福祉で約40 万人増)などで増加が見込まれる。一方で、生産工程・労務作業者(約625 万人減)、事務従事者(約155 万人減)、農林漁業作業者(約125 万人減)、管理的職業従事者(約45 万人減)などでは減少が見込まれる。
(1)、(2)で見てきたように、今後は、あらゆる面における変化が激しくなるとともに、知識・技術・技能など人的資源が付加価値を生み出す最も重要な要素となる。さらに、人口減少、少子高齢化の進展による労働力供給面や、財政面での資源制約が見込まれる中、希少な資源の有効活用がより強く求められるようになる。
特に、付加価値を生み出す最も重要な要素である人的資源を有効に活用できるようにすることが重要となるので、人々が保有する潜在能力を最大限に発揮できるようにするとともに、人的資源の質的・量的な面での需給のバランスが確保されるようにしていくことが求められる。
このため、①人的資源が有効に活用され、社会経済の活性化が図られるようにしていくこと、②生活全体に対する人々の満足度及び勤労意欲の向上を図ることにより、我が国の生産性及び国際競争力の向上を図っていくこと、③職業生涯を通じて計画的に能力開発を行うことができるようにし、我が国全体として変化に対応できる人的資源を蓄積していくことが必要となる。
こうしたことを効率的に実施していくためには、以下の対応が求められる。まず、人的資源の有効活用を通じた社会経済の活性化が図られるようにするためには、人々が能力を発揮しがら安心して生活できるようにしていくことが求められる。この実現のためには、その能力を発揮する場である企業、自営、NPO 等各種団体等の活動の活性化を促進していくことや、各個人の意欲・能力・希望に応じて円滑に適切な働く場を得ることができるようにしていくことが重要である。その際、人々が安心して能力を発揮することができるようにするための生活の基盤整備等も求められる。就職困難者の就業を通じた社会参加の促進・支援についても留意が必要である。したがって、企業における雇用の枠組みにとらわれない働き方の推進、人々の労働意欲を高め企業等労働需要側の雇用意欲を高めるための税制や社会保障など雇用関連諸制度における対応、雇用と福祉の連接の確保等が求められる。
また、人々の生活への満足度及び勤労意欲の向上を生産性及び国際競争力の向上に結び付けていくためには、人々の生活のゆとり及び高い勤労意欲を基盤とした個人の職業能力開発努力や、企業における人材育成と企業の技術革新や設備資本戦略とが円滑に結びついていくようにするため、雇用政策と産業政策の連接も求められよう。多様な働き方が進展していく中で、社会保障や税制等諸制度を働き方に中立的なものとしていくことも求められる。
さらに、職業生涯を通じた職業能力開発により人的資源の蓄積が図られるためには、人々が将来に対して不安を抱くことなく安心して職業能力開発を行い能力発揮できる環境の整備が重要となる。このため、学校教育を労働市場と連接したものとするとともに、労働市場と大学・大学院等学校教育の間を金銭的な制約条件無く移動することを可能とするなどによる職業能力開発機会の確保も求められよう。
このように、今後は、直接的に関連する政策単体で対応していくのではなく、政策間相互の連接が図られるようにすることが重要となる。特に、雇用政策は、今後の我が国経済社会の活性化や国際競争力の確保等を図っていく上で最も重要となる人的資源の蓄積と活用や、社会を支える側に回る人々の増加等に大きな役割を果たすこととなる。
極く簡略化した見方からすれば、従来は成長経済の下での長期雇用慣行を前提とし、雇用の安定・維持を主軸に置いた政策が展開され、ある意味で長期的な政策の方向性を明確に意識することなく運営することができた。
しかし、今後は、変化が激しい時代となっていくことから、特に人々の生活及び経済活動の根幹をなす雇用・就業問題への対応については、将来の社会経済の変化の方向性を踏まえながら、人的資源の蓄積及び有効活用や、社会を支える側に回る人々の増加を含めた社会参加の促進等の観点から他の政策分野への働きかけも含めた総合的な対応が求められる。
したがって、以上のような対応を柱としつつ、従来の企業への働きかけを主軸に置いたものから個人への働きかけも主軸に置いたものとし、また、雇用・就業分野以外で必要とされる対応も含めた幅広い観点からの検討を踏まえた上での、新たな積極的雇用政策の方向性を提示する必要性が高まる。
以上述べたように、本格的な多様な知恵の時代への移行に当たっては、それぞれの政策が経済活力を生み出す最も重要な要素となる「人」を中心に置いたものとされるとともに、政策間相互の連接を図りながら社会経済や人々の生活などあらゆる面での持続性が確保することが求められる。
Inspired by Nikkeinews20070903 経済教室 エコノミクストレンド 大竹阪大教授
1990年代半ば二発表された、最低賃金引き上げが雇用を増やすという米国の実証研究の影響から、日本でも最低賃金上げが格差対策として注目されている。
しかし、このような見方がある
最低賃金引上げで被害を受けるのは、新規学卒者、子育てを終えて労働市場に再参入しようとしている既婚女性、低学歴層といった、現時点で生産性が低い人たちだ。最低賃金引き上げは、企業による機械化、生産性のより高い労働者の雇用努力を促進する。最低賃金上げにより、彼らの就業機会が失われると、仕事をしながら技術や就労習慣を身につけることができなくなる。
最低賃金引き上げでも、仕事を失われない可能性があるのは、最低賃金近辺の労働者が、生産性より低い賃金しか支払われていない場合である。とくに、労働市場が買い手市場のときには(バイトする場所が、ほかにないケースなど)、そのような現象が発生する。
最低賃金引き上げは、貧困解消手段として政治的にアピールしやすい。しかし、この結果被害を受ける恐れが高いのは、未熟練動労者(これから仕事に就く若者・既婚女性など)だ。労働組合が主張する格差是正策も、最低賃金引き上げで職を得られたかった人を排除した論理であることを忘れてはならない。社会全体で見れば、最低賃金引き上げで職を失う人を生み、格差は拡大する。
この貧困対策として、同氏は「1.教育訓練を充実する 2.負の所得税 (勤労所得税控除)」により、所得再分配の必要性を説いている。
Inspired by Nikkeinews 20070815 経済教室 甦る経済思想 アルフレッド・マーシャル
物質的な豊かさだけでなく、生活全体の質の向上を図ることが経済学の目的と考え、教育による能力の向上を強調したマーシャル。彼は、企業家が持つべき倫理として、経済騎士道を重視した。
「冷静な頭脳と温かい心情」を重視し、「冷静な頭脳」を必要とする科学は、人間生活の改良の手段とした。「貧困を解消し、人間の能力・資質を高める」という展望を持ち、「富の増大よりも生活の質の改善に着目して、経済学を研究する必要がある」とした。よって、彼にとって経済学の真の目的は「個人的、社会的側面、道徳的、宗教的側面、肉体的、知性的、感情的、及び技術的側面、すべての側面での人間生活の向上」であった。
興味深いのは、「あるものの経済的有用性は、それを使用する人間の能力や思考にも依存する。それゆえ、富の価格である経済学は、人間の能力と思考に関する学問でなければならず、富の蓄積は『物質と同様に能力の蓄積』を意味する」という彼の思想だ。その意味から、より良い教育の機会を与え、能力や資質を向上し、生活の質を向上させることが、有機的で持続的な成長をもたらす(=「道徳化する資本主義」)と考えた。
経済的有用性が、使用する人間の能力や思考によるものにも依存するのであれば、すべての側面で人間生活を向上させる努力が、重要である。「働く」ことは、経済価値を生み出す源泉であると同時に、その有用性を拡大する、能力と思考を磨く場でもある。
Inspired by Nikkeinews 20070820 経済教室 デイビッド・オーター MIT准教授
先進国で所得格差が拡大しているのは、高度な教育を受け抽象思考が必要な仕事をする労働者の生産性は、事務的な仕事がコンピュータ化されたことで、ますます向上する一方、高齢化に伴い自動化されにくい対人サービスも拡大している。移民の抵抗感の強い日本では、とくに肉体労働のような労働集約型の仕事の需要拡大が課題と指摘する。
同氏は、規則性のある業務(情報の分類、整理、検索、製造現場の組み立て、監視など)はコンピュータが肩代わりする一方、規則性が解明できない業務が拡大しているとする。その一つが、「抽象思考」。仮説を立てる、説得力のある論拠を寝る、新しいアイデアや製品を考案する、部下を管理しやる気を引き出すなどの作業には、創造性、直観、洞察力が不可欠である。これらの領域について、コンピュータはいまだ初期段階にあり、今のところ抽象思考を要する仕事は高度な教育を受けた創造的で頭のいい人たちに任されている。
また、コンピュータが苦手とするもう一つの領域は、対人サービス。トラックやタクシーの運転手、接客係、警備員、清掃員など、人手を要し、その場で臨機応変に対処しなければならない類の仕事も、需要が拡大、比率が高まっている。とくに日本は、高齢化で対人サービスの需要が増えている。多くの先進国では、こうした職業を移民が引き受けてきた。しかし、日本のように、移民に抵抗がある国では、おおむね若手労働者が、低所得で生産性の向上しにくい労働集約型の業務を担っている。
タクシー運転手などの労働集約業務が、現状に比べて創造的なタクシーサービスに進化したとして、大きく所得が向上する可能性はあるのだろうか。ソースは失念したが、ビルゲイツなどの抽象思考で高所得を獲得する人々は、無くすことのできない労働集約型業務へ付く人々へ、所得の再配分を図ることが重要とする考え方がある。
知識社会が生み出す階層問題。抽象思考を要する仕事が、高度な教育を受けた人によるものだとすると、教育の機会によって階層が決まることになる。「格差は遺伝する」という本も出ているようだが、所得によって享受できる教育の品質が異なるとするれば、階層の固定化が進みやすい。
また、日本のように少子化によって高等教育を受ける人々の比率が高まる一方で、労働集約型の対人サービス需要が拡大すると、教育を受けていても低所得の業務に就く可能性もある。ロスト・ジェネレーション世代のニート問題とも関連する。
「誰もが考える社会」と「誰もが高所得を得る社会」とは別ではあるが、ナレッジ・ワーカ社会を構築することの意味を、所得格差の視点からも見直す必要がある。
Inspired by Nikkeinews 20070816 経済教室 「甦る経済思想~ケインズ編~」
「大きな政府論」と混同されがちなケインズ主義だが、彼の関心の焦点は、「資本主義を適切に管理(manage)する」ことにあったとする。
第一次世界大戦前夜、グローバリゼーションが進み、各国が貿易で結ばれることで戦争の可能性は低下しているとする「資本主義の平和」は、多くの支持を集めた。最近でも、『フラット化する世界』でトーマス・フリードマンが、国境を越えた企業の投資活動が古典的な地政学の対立を抑止する効果がある(=デルの紛争回避理論)と主張し、話題を集めた。
しかし、歴史を見ると、貿易で結びついていたはずの二国が戦争を始めた例はいくつもあるという。第一次世界大戦でも、英国は最大の貿易相手国であったドイツとの戦争を回避できなかった。
その原因としてケインズがあげるのは、世界経済が抱えていた三つの不安要素である。
ケインズは、戦争の経済的原因を、「人口の圧迫」「市場獲得競争」で起こるとの見方を示し、自由放任の経済体制下では、需要の不足という国内の経済的困難を解決するのに、国外の市場を強引に求めるしかなかったと説明する。だが、国家による人口や需要の管理により、それらの要因を除去できる可能性がある。
本稿を担当している柴山滋賀大学准教授は、昨今の中進国や途上国の人口爆発の現象にふれ、これらの国々で政府組織が未発達である点を指摘。ケインズの主張が、今のグローバリゼーションの動きを考える上でも示唆的であるとする。
「経済の社会化が、共同社会の安定につながる」という主張を、国家の成熟を待って行うのか、意思のある地域住民へのEmpowermentによって行うのか、ケインズの意思を汲み取りつつ、新たなモデルの探索につなげたい。
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